文楽の女の人形には足がない。
と言うか、必要がない。「足遣い」が着物の裾に手を入れて左右に動かしたり、膝の部分に拳を入れる。すると、あたかも足があって歩いたり、ひざまずくように見える。裾からつま先が見えてしまうより、ずっと女らしく、しとやかな印象を与える演出だ。
吉田簑助、フランス大使館で国宝の技を披露 - 東京 〔AFPBB News〕
例外的に、「足のある」女が登場する演目を紹介しよう。醤油屋の手代・徳兵衛は、主人に返すべきカネを友人・九平次にだまし取られる。そのうえ、「借用書の印は偽造」と言いふらされ、信用までも失ってしまう。八方塞がりとなった徳兵衛は「もはや死ぬしかない」と覚悟を決め、その夜、恋仲の遊女・お初のもとに忍んでいく。
お初は縁台に腰掛け、縁の下にいる徳兵衛をたっぷりとした着物の裾で人目につかないように隠す。お初は無言のまま、白く細い足で「覚悟はできているの?」と徳兵衛に問う。徳兵衛は、その足を自らの喉(のど)に当ててみせ、揺るがぬ決意を伝える。
これは、近松門左衛門の代表作の1つ「曽根崎心中」の天満屋の段(てんまやのだん)の一場面だ。暗がりに浮かび上がる白いナマ足に頬ずりする男。それが、死の道行を覚悟した男女の無言の会話に。何ともエロチックなシーンだ。
「人形劇」=「子ども向け」と思い込んでいる人が多い。しかし、文楽はむしろ、お子様には刺激が強すぎるR18(18歳未満お断り)の世界なのだ。
神社境内の小屋で、男女がこっそり・・・
大阪の国立文楽劇場で今月上演された「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」の座摩社の段(ざまやしろのだん)では、恋人同士が神社境内の小屋に人気(ひとけ)がないのを見計らい、こっそり入り込んでエッチをしちゃう場面が描かれている。
恋人と二人きりになりたいお染は、お供の下女に向かって「薮入りでもなければ、好きなお芝居も見られないのだから、今、行ってきてもいいわよ」と言う。事情を察した下女は「はいはい、じゃあ、行って参りますが、お二人はここで薮入りですね」としたり顔で去っていく。
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