東京ベイ・浦安市川医療センターのハートチーム((c)Tokyobay-MC)

 近年、心臓医療の世界では「ハートチーム」という言葉が注目を集めている。ハートチームとは、心臓病を治療するための多職種から成り立つ医療チームのことだ。

 では、なぜ心臓医療の世界で「チーム」が注目されているのか?

 1つの理由は、医療現場では「専門分化」による弊害が生じているためだ。専門職集団では、「自分の専門領域のことは責任を持つが、ほかのことは知らない」といった視野狭窄が生じやすい。患者の状態を俯瞰的に捉えて、全体最適を図るような視点がどうしても失われがちになる。

 そのような弊害を打破し、外科医、内科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、理学療法士などが職種の壁を越えた連携をすることで、心臓病を治療しようとするのがハートチームだ。

 今回取材したのは、千葉県浦安市にある東京ベイ・浦安市川医療センターのハートチーム。

 2013年に心臓血管外科が立ち上げられてわずか数年にもかかわらず、2016年の手術件数は前年比42%増の450件。その実力を急速に伸ばしつつある注目株の病院である。

 東京ベイのハートチームがユニークなのは、トップクラスの実力を持つ医師たちが有名病院で働くという選択をせず、「理想的な医療チームをゼロから創り上げよう」という思いで集まったことだ。文字通り「ベンチャースピリッツ」に溢れる医療チームである。

 チームの核となるのは3人の医師。

 ハートセンター長の渡辺弘之氏は、日本でも数少ない心臓超音波検査(心エコー)のプロフェッショナルだ。日本トップクラスの心臓専門病院である榊原記念病院で診療部長を務めた後、東京ベイ・浦安市川医療センターを次なる挑戦の舞台に選んだ。

 外科部長の田端実氏は、米ハーバード大学のブリガム・アンド・ウィメンズ病院とコロンビア大学病院、榊原記念病院など世界の超一流の病院でその実力を磨いてきた。田端氏が行う内視鏡下の低侵襲心臓手術 (MICS)を見学するために、国内だけではなく海外からも医師が訪れる。

 内科部長の小船井光太郎氏も、米国で循環器内科・カテーテルインターベンション専門医のトレーニングを積み、コロンビア大学病院にてカテーテルインターベンション医として活躍した経験を持つ。

 3人の共通点は、従来の慣習にとらわれない柔軟な発想の持ち主であること。そして、高いレベルの医療を実現しようとすればするほど、他職種との「チームプレー」が必要になってくることを理解していることだ。