現在のアメリカーナ音楽シーンを象徴するアーティスト、リアノン・ギデンズ(「Rhiannon Giddens - Come Love Come」YouTubeより)

 今年2月に、「圧倒的底力!これがアメリカ音楽の進化の法則だ ~ジャズギターから聴こえてくるアメリカーナ音楽の奥深き世界」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49248)という記事を書いたところ、おかげさまでさまざまなところから大きな反響をいただき、あ、アメリカーナ音楽は今みんな注目してるんだな~と実感しました。

 その記事では、ジャズギター・シーンでのアメリカーナ音楽の注目作品を取り上げましたが、今回はアメリカーナ音楽シーンのみならず、アメリカのポップミュージック・シーンでも大きな注目を集める女性シンガーソングライター3名をご紹介したいと思います。

本コラムは音楽レビューサイト「Mikiki」とのコラボレーション記事です

 アメリカのポップミュージック・シーンでは、「バック・トゥ・ザ・ルーツ」といった感じの、戦前まで遡った古いルーツミュージックを見直す/再発見するという動きが、21世紀に入ってからずっと続いているように思います。女性ジャズヴォーカリスト、ノラ・ジョーンズの鮮烈なデビューなどはその一例でしょう。

 そんな流れがあるなかで、アルバム『Genuine Negro Jig』が2010年のグラミー賞“Best Traditional Folk Album”を獲得するなど一躍全米で大きな話題を集めたアフロアメリカンの若き3人組バンド「キャロライナ・チョコレート・ドロップス」の登場は、大きなトピックだっと言えるでしょう。彼らは19世紀にまで遡り、バンジョーやフィドルなどを使用したアフロアメリカンのジャグバンド・スタイルを研究し、そこに現代的なヒップホップやソウルのフィーリングを加味するサウンドをクリエイトして、大きな驚きと賞賛を得ました。

 もう1点、彼らが画期的だったのが、アメリカン・ルーツミュージックを再定義した音楽性/スタイルを提示していたことです。つまり、アメリカには、アフリカから奴隷として連れてこられたアフロアメリカンの音楽と、ヨーロッパ、特にアイルランドやスコットランドなどの移民が持ち込んだケルト音楽とがお互いに影響を受け合い、未分化だった時代がありました。彼らは、黒人/白人音楽が文化していないその時代の音楽こそがアメリカン・ルーツミュージックと呼べるのではないかと独自の解釈を提示したのです。