保守系の自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ=1954年生)氏は、文在寅氏が北朝鮮にある開城(ケソン)工業団地の大幅拡張を打ち出していることを槍玉に上げ「韓国で雇用を増やそうというのではなく、北朝鮮のための雇用拡大策ではないか」と批判した。

 また左派の正義党の沈相奵(シム・サンジョン=1959年生)氏も、文在寅氏のサード(THHARD=地上配備型ミサイル迎撃システム)配備問題に対するあいまいな態度を批判すると、文在寅氏が「私ではなく、立場があいまいな安哲秀氏に聞いてほしい」と語る一幕もあった。

視聴率は26%

 だが、全体としては、討論会の参加者が5人もいたことで焦点がぼやけた面は否めない。もともと当選可能性が高くない、洪準杓氏、劉承旼氏、沈相奵氏が元気に発言して攻撃に回ることは当然だ。

 文在寅氏も予想していたことで、うまく言質を取られないような発言を続けた。安哲秀氏は、文在寅氏を相手に何度も論争を挑むが、かわされる場面も多かった。

 それでもやはり一般国民の関心は高かったようだ。午後10時からという時間帯にもかかわらず、視聴率は26.4%を記録した。かなりの数字と言えるのではないか。

 今回の選挙は最終盤まで接戦だ。最新の世論調査を見ると、文在寅氏がリードを維持しており、急追する安哲秀氏がなかなか逆転できないこう着状態でもある。この状況が、投票直前まで続く可能性も高まっている。

 今回の選挙は、史上初めて進歩系候補2人が世論調査で上位を競い合うという展開になっている。初めてのことで、「過去の選挙戦」の法則からはなかなか結果を推測できない。

 韓国の大統領選挙はこれまで、「地域性」「世代」「イデオロギー」の3つか重要な要素だった。

地域性、年代、イデオロギーの3要素は?

 このうち「イデオロギー」については、多数派の保守派からの当選の可能性がほぼなくなったという見方が圧倒的で、有力候補を、「右派」か「左派」、「保守」「進歩」できれいに分けることができなくなった。

 イデオロギーで当選のための支持者を固めるやり方が通用しないのだ。

 文在寅氏と安哲秀氏ともに、「保守」あるいは「中道」の票をどれだけ奪えるかが勝敗を決すると見て、選挙期間中、「右展開」を加速させている。外交安保政策では、大きな差はなくなっている。