ロシア南部 アストラハン市内 ソ連時代から変わらない街並みが残る

 去る3月26日、モスクワはじめロシア国内の主要都市で「反汚職デモ」が繰り広げられた。クリミア併合後に高い支持率を誇るウラジーミル・プーチン政権での出来事であっただけに、日本のメディアでも「反政府デモ」として大きく取り上げられた。

 このデモは反政権活動家として有名な弁護士、アレクセイ・ナバリヌイ氏がインターネット上のSNSなどを通じて呼びかけたものだ。

 これに先立って彼の組織がドミトリー・メドベージェフ首相のビデオを公開した。首相の不正蓄財を暴露したこのビデオがデモのきっかけになったと思われる。

 筆者も公開直後にユーチューブでそのビデオを見た。ドローンで撮影したと思われるモスクワ郊外の大邸宅、イタリア・トスカーナのワイン畑など、一国の首相・元大統領とはいえ疑念を抱かざるを得ない光景であった。

汚職・不正に対する若者の怒り

 ちなみに先頃発表されたロシア政府要人の所得・資産公開によると、メドベージェフ首相の2016年中の年収は858万ルーブル(約1673万円、1ルーブル=1.95円、以下同)である。

 また同首相はロシア国内に367.8平米のアパートを所有、18.8ヘクタールの土地を49年間リース保有している。

 なおプーチン大統領は年収が885万ルーブル(約1725万円)、保有資産は土地1500平方メートル、77平米と153平米の2つのアパート、18平米のガレージである。

 冒頭の暴露ビデオで公開された大邸宅はこの公開資産にはもちろん含まれておらず、疑念は深まるばかりであるが、当のメドベージェフ首相はデモ当日はソチでスキーに興じていたと報道されている。

 筆者はデモ当日は東京にいたので、現場の雰囲気(もちろんモスクワにいても近づくことはないのだが)を知る由もないが、その翌週にモスクワでロシア人の友人たちの話を聞くと、今回のデモはこれまでの反政府デモとは何かが違うと言う。

 デモ参加者の多くが10~20代の若者で、彼らの怒りの矛先がどこに向いているのか分からないと言うのである。