象徴的な記事が4月7日付のモスクワタイムスのウエブに掲載されている。見出しはこうだ。

 「ロシアの医師の給与はファーストフード店員以下」

 同記事が伝えるところでは、米シンクタンクCEPRの調査で、ロシア国内の医師の時給は140ルーブル(273円)、マクドナルドのスーパーバイザーの時給は146ルーブル(284円)となっている。

 日本をはじめ欧米諸国では考えられない状況だが、ロシアでは医師の90%以上が国家公務員であり公立の病院で勤務している。もちろん医師になるためには欧米諸国と同じレベルの高等教育を受ける必要がある。

若者の真の怒りは経済格差

 こうした社会のミドル層の崩壊に直面するロシアの若者が、自分の将来に対してやり場のない怒りをデモで表明するのも無理からぬものがある。

モスクワ市内には愛国心を鼓舞する巨大ペイントが増えている

 そして今回のデモはモスクワにとどまらず、ロシア各地の主要都市でも行われた。そこには大都市と地方の格差に憤る若者の怒りもあったに違いない。

 大都市と地方にある程度の経済格差が生じることは人口規模、産業構造を考えれば致し方ない。しかしそれが命の格差になるとどうだろうか?

 4月11日、ソビャーニン・モスクワ市長はモスクワ市の平均寿命が77歳となったことを発表した。ハイテク医療の導入でモスクワ市民の平均寿命は改善を続け、ついにスロバキア、エストニアといった東ヨーロッパ諸国並みになったと称賛した。

 しかし、ロシア全体の平均寿命は依然71歳にとどまる。ロシア国内で最も寿命が短いのが、トゥヴァ共和国の62歳である。

 モンゴルと国境を接するこの共和国ではいまだに病気になるとシャーマン(呪術師)に頼ると聞く。モスクワのようなリッチな大都市とは異なり近代的な医療設備へのアクセスが十分ではないことは想像に難くない。