もちろん、表向きは汚職で私腹を肥やしたに違いないメドベージェフ首相に向いているのは確かだろう。しかし、メドベージェフ首相が辞任すれば怒りが収まるかというとそういうものでもない。

 むしろ彼らの怒りはもっと漠然とした、社会全体の閉塞感にあるように感じるという。その閉塞感の根本は何であろうか?

 筆者はロシア社会に広がりつつある「貧困の拡大」が原因なのではないかと感じている。

 確かにマクロの景気は2016年第4四半期から前年比プラスに転じ、2017年もロシア政府は+2%程度のプラス成長を見込んでいる。

国民の75%が貧困層以下

 ロシア国民の多くはやっと暗いトンネルを通り抜けたと喜んで良さそうなものであるが、景気低迷と高いインフレの中でロシア国民の所得格差は拡大しており、景気回復・拡大の担い手となるべき中間層が大きく傷んでいる可能性が高い。

無機質な高層建築が立ち並ぶ新たなビジネス街 モスクワ・シティ

 ロシアにおける貧困層の定義は最低月収(1万700ルーブル=2万865円)以下の層を極貧層、最低月収からその2倍以下の層が貧困層とされる。

 また中間層は最低月収の4~6倍(8万3460円~12万5190円)と定義されている。

 この定義に従うと、足許、中間層に属する勤労者は12.7%(3年前には15.5%であった)、12%がアッパーミドル以上、そして残り75%が貧困もしくは極貧層となる。

 勤労者の4分の3が貧困層にとどまるというのは、日本でも話題になった「ワーキング・プア」そのものだ。そしてロシアの場合、貧困者の数の問題以上にロシア固有の問題がある。

 それは教師や医師、それに科学者、エンジニアといった、西側社会ではエキスパートと呼ばれる職種の勤労者の多くが貧困層に属するという問題である。

 こうした人々は本来、社会の健全な発展や維持の基盤となることが期待されているはずである。ところが、その彼らが貧困に直面してしまっている。