フランスのテレビ局が行った実験は驚くべき結果に(写真はイメージ)

 冒頭から、問題を出そうと思う。以下は、2009年にフランスのテレビ局が実際に行った実験である。

【架空のクイズ番組のパイロット版(その番組企画が成立するかを試すためのテスト)の収録に一般参加者を集め、彼らに出題者になってもらう。彼らは問題を読み、解答者(実は演技をする実験協力者)が答を間違えると電気ショックを与えるよう指示される。
 電気ショックの電圧は、解答者が間違いを続けるごとに上がっていく。解答者が間違えて電気ショックを受けると、苦痛を感じている音声(事前に収録したテープ)がスタジオに流れるようになっている。出題者から解答者の姿は見えないが、電圧が上がるにつれ死んでしまうのではないかと思われる反応が出題者に伝わるようになっている。
 さて、その状況の中で、果たして参加者の何%の人が最高電圧の460ボルトまで、つまり解答者が死んでもおかしくない電圧まで電気ショックを与えただろうか。】

 この問題の答えを考えるのと同時に、あなただったらどうだろうか、という想像もしてみてほしい。あなたがこの出題者で、自分が電気ショックを与える立場に立ったら、460ボルトまで電気ショックを与えるかどうか。どうだろうか?

 信じがたい現実を明らかにする3冊を紹介しようと思う。

「権威」に人はあらがえない

死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』(クリストフ・ニック+ミシェル・エルチャニノフ著、河出書房新社)

 1960年代に、ミルグラムという心理学者が行った有名な「アイヒマン実験」と呼ばれる実験がある。「アイヒマン」という名前は、ナチス・ドイツで上司の命令に従い、数百万人のユダヤ人を収容所に送り殺したアドルフ・アイヒマンの名前に由来している。