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日本人移民上陸の地、ブラジル・サントス

ブラジル南部サントス(Santos)の海辺の公園に設置されているモニュメント。造形作家の大竹富江(Tomie Otake)さんが製作し、日本からの移民のブラジル到着100周年を記念して2008年に設置された(2013年1月1日撮影)。(c)AFP/YASUYOSHI CHIBA〔AFPBB News

(文:北岡伸一)

 私は国連大使時代(2004〜2006)、月刊誌の頃の『フォーサイト』に「イーストリヴァーを見渡す書斎にて」というコラムを連載していた。国連という世界の外交のホットスポットで見聞きしたことや考えたことを、毎月1度、書いていた。日本外交は私の研究対象ではあったが、現場の経験は初めてで、これを読者に伝えることは、学者出身の大使の責任のように思えた。

 現在私はJICA(国際協力機構)の理事長を務めている。国連大使のあと、東京大学に戻り、政策研究大学院大学に移り、国際大学の学長を兼ねたあと、2015年10月に任命された。9年ぶりにまた実務の世界に戻ったわけであるが、国連大使時代にも途上国の問題が多かったから、その頃の続きのような面も多い。

 JICAの仕事は言うまでもなく途上国の発展の支援である。それゆえ、月に1回は海外出張をしている。大学教授時代と頻度はあまり変わらないが、今は、交通不便であまり人の行かない国への出張が多い。

 しかし行ってみると、そこで働くJICAの職員がおり、彼らと協力してくれている現地のスタッフがおり、現地の人々がいる。また、かつてそこにいた日本人の足跡にも触れることになる。

 これから、そういう世界の辺境ないし遠隔の地で働いている、あるいは働いていた日本人を紹介したいと思う。また相手国の日本に対する認識にも触れてみたい。JICAの理事長になる前の海外での経験も織り込むつもりである。日本人が内向きになりがちな昨今、日本人が持っている可能性を、過去、現在、未来にわたって考えてみたい。それが、この連載を「日本人のフロンティア」と名付けた理由である。

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