(英エコノミスト誌 2017年4月7日号)

ベネズエラ最高裁、議会から立法権剥奪 「クーデター」との批判も

ベネズエラ最高裁が議会から立法権を剥奪する判断を示したことを受け、同国首都カラカスの最高裁前で治安部隊ともみ合う野党幹部ら(2017年3月30日撮影)。(c)AFP/JUAN BARRETO〔AFPBB News

政権内部の亀裂にかすかな希望の光が見える。

「これは独裁制だ。世界中がお見通しだ」。ベネズエラの首都カラカスで4月4日、覆面姿の学生たちが1列に並んだ国家保安隊を野次っていた。

 この街の大通りの1つ、リベルタドル通りで催涙ガスが撒かれたことから、学生たちが始めた議会までの行進は、石を手にした若者と機関銃を携えた兵士とのにらみ合いに発展した。掲げられたプラカードの1つには、ベネズエラの地図を軍靴が踏みつけている絵が描かれていた。

 1999年からこの国を支配している権威主義の政権に対する抗議行動は、もう珍しいことではない。2014年には、大規模なデモのために双方合わせて43人が命を落としている。しかし4月初めのにらみ合いでは、最近のデモよりも強い怒りと明るい希望の両方が感じられた。その理由は、3月29日から立て続けに起こっている異様な出来事にある。

 発端は、現政権に従順なベネズエラの最高裁判所が、野党勢力が支配する議会の権能を今後は自らが行使するとの決定を下したことだった。総選挙で野党が勝利した2015年以降、議会の影響力を奪う手段はいくつも講じられており、今回の判断もその1つでしかなかった。

 ところが、合法的に付与された権力が正式に簒奪(さんだつ)されるという事態に、新たな怒りがわき起こった。チリ、コロンビア、ペルーの3カ国は駐ベネズエラ大使を呼び戻し、南米・北米大陸の国際機関である米州機構(OAS)のルイス・アルマグロ事務局長は、政権が議会を叩く「自傷クーデター」だと批判した。

 3月31日には、現政権の忠実な支持者であるルイサ・オルテガ・ディアス検事総長が最高裁を批判するという、2つ目の予想外の出来事が発生した。オルテガ氏は検事らに向けた年に1度の演説で(この模様はテレビで生中継された)、最高裁の決定は憲法秩序の「破壊」だ明言し、「民主的な道に戻ることができるように、我々は反省を求める」と述べたのだ。

 その数時間後、ニコラス・マドゥロ大統領は国家安全保障委員会を招集し、先の決定のうち最も異論の多い部分を撤回するよう最高裁に命じた(これにより、最高裁の独立性が虚構であることが明らかになった)。