(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年3月25/26日付)

米大統領、温暖化規制見直し令に署名 「対石炭戦争」終結を宣言

米首都ワシントンの環境保護局で、炭鉱労働者らに囲まれてエネルギー政策に関する大統領令に署名するドナルド・トランプ大統領(2017年3月28日撮影)。(c)AFP/JIM WATSON〔AFPBB News

 今から80年近く前、米国の教育家のエイブラハム・フレクスナーは「無用な知識の有用性」と題したエッセーを発表した。その中で、最も強力な知的、技術的ブレークスルーは多くの場合、当初は「役に立たない」ように見える実生活とあまり関係がない研究から生じたと論じた。

 そのため、たとえ即座に見返りを生まなくとも、こうした「無用」な努力を支援することが極めて重要だ、さもないと次のイノベーションの波が生まれないからだとフレクスナーは唱えた。「役に立つものに結実するかもしれないし、しないかもしれない好奇心は、恐らく近代思考の傑出した特徴だ」と氏は断じた。「これは目新しいことではない。ガリレオやベーコン、アイザック・ニュートンにさかのぼるものであり、絶対に邪魔してはならない」

 これはじっくり考えるべき力強い主張だ。ドナルド・トランプ米大統領の新政権が仕事に取り掛かり始めた今は特にそうだ。

 フレクスナーは1939年にこうした言葉を書き記したとき、自分が革新的な時代と向き合っていることを知っていた。何しろ、米国は当時、長い恐慌を経験したばかりでなく、欧州は戦争の瀬戸際に立っていた。

 無理からぬことだが、こうした状況すべてが「くだらない」研究にお金をかけることを正当化するのを難しくした。だが、フレクスナーはこの大義にコミットしていた。1929年には、米国の裕福な一族であるバンバーガー家を説得し、その莫大な資産の一部を使い、まさにこの種の「目的を定めない」研究を支援するためにプリンストン大学高等研究所(IAS)の創設費用を寄付してもらった。

 この取り組みは成果を上げた。アルベルト・アインシュタインなど、ナチスドイツから逃れてきた聡明なユダヤ人科学者がIASに集い、自由なアイデアを追求した。初期の相対性理論を発展させるアインシュタイン自身の研究など、その一部は当初、価値があるようには見えなかったが、多くはやがて、(数十年後のこととはいえ)強力な有用性を生み出した。

「アインシュタインの理論がなければ、我々の全地球測位システム(GPS)追跡装置は7マイルほど不正確だった」。現在IAS所長を務めるロベルト・ダイクラーフ氏は、新たに出版されたフレクスナーのエッセーの復刻版の序文で、こう書いている。量子力学や超電導といった概念も、最初はかなり無用に思えたが、後々、莫大な配当を生んだ。