現場の気付きが駅を変えた

 2011年にJR東日本に入社して以来、日々、みどりの窓口で切符を販売したり、朝の通勤ラッシュ時にホームに立って乗客を誘導したり、構内放送を行ったり、車掌として電車の出発・到着時に確認したりするなどの業務に携わってきた倉持さん。

 「お得なパッケージ商品や切符を考案する営業の仕事にも就けたらいいな」

 そんな目標も見えてきた頃、シンガポールとマレーシアを結ぶ鉄道の整備に日本が協力するかもしれないという話を耳にしたのを機に、「海外の鉄道を楽しむ切符や旅行商品を作ったりする仕事をしてみたい」と考えるようになったという。

 海外鉄道コンサルタント会社のJICへの出向も、自ら手を挙げ、半年前につかみ取ったばかりだ。この日、倉持さんは、以前勤務していたJR南浦和駅でのエピソードを紹介した。

 当時、京浜東北線と武蔵野線の乗り換えが分かりにくいという声が多かったこの駅をなんとか改良しようと考えた倉持さんは、同僚と一緒に他のターミナル駅を視察。

 床に導線を描くなど、各駅がそれぞれに工夫しているのを参考に、南浦和駅でも皆でアイデアを出し合い、「武蔵野線はこちら」と書いた紙をラミネート加工し電光掲示版の下などに貼り出したところ、問い合わせが激減したという。

 「お客様と日々接する社員がお客様を一番分かっているのは間違いないし、お客様目線の対応もできる。だからこそ、こうしたらいいのでは、という気付きは大切にしてください」と訴えた倉持さん。

 「日本で仕事をしている時には、自分の知識がミャンマーの役に立つとは思っていなかった」「JR東日本の社是である“自ら考え、自ら行動”の姿勢も伝えたい」と意気込むその表情は、念願の海外業務に携われる嬉しさに溢れている。

利用者の声を聞いてみよう

 その日の夕方、20人の駅員たちは部屋を飛び出し、駅構内に散った。春以降、この研修を4回にわたり率いてきたJICの東充男さんの発案で、駅の利用者に対して2人1組でインタビューすることになったのだ。

人材育成講座でおじぎの仕方を教える東さん

 「文句があったら言って来い、という“待ち”の姿勢ではなく、自らお客様の声を聞く姿勢を学んでほしい」というのが、東さんの狙いだ。

 彼らが手に持っているアンケート用紙には、駅を訪れる頻度や列車に乗る理由、さらにMRに対する印象や改善を望みたいサービスといった利用者への質問項目が並ぶ。

 「彼らが嫌がらずにどこまで聞いてくれるのか不安もあるのですが」と、倉持さんは少し心配顔だ。