(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年3月16日付)

トランプ政権発足2か月、障害相次ぎ公約達成に遅れ

メキシコとの国境に壁を築く計画の大統領令に署名するためにペンのふたを取るトランプ氏(2017年1月25日撮影)。(c)AFP/NICHOLAS KAMM〔AFPBB News

 大統領は選挙を詩で戦い、政治を散文で執り行う、という言葉がある。ドナルド・トランプ氏の場合、選挙期間中の売り口上はとても詩的とは言えなかった。しかし、分かりやすかった。トランプ氏は強い意志の力で米国を再び偉大にするという。そして、そこにはオバマケア(医療保険制度改革法)をご破算にし、もっと安くて質が高いうえ、すべての米国人をカバーする制度に置き換えるという提案も盛り込まれていた。

 ところが、実際に打ち出された「トランプケア」には、ほぼ正反対の効果があることが明らかになっている。実にお粗末なこの法案で判断する限り、トランプ氏は散文どころか、回りくどくて分かりにくい駄文で政治を執り行っている。

 この法案は、連邦議会で否決されて、トランプ氏にとって政治的な災難になるか、あるいは、可決されて大惨事になるだろう。

 皮肉なことに、トランプ氏はすでにそれを承知しているようだ。生涯、いろいろなものに自分にちなんだ名前を付けてきた同氏だが、この医療保険制度改革法案にだけは自分の名前を付けたくない意向をはっきり示してきた。トランプケアだけは勘弁してほしい、ということだ。だが、この法案にはこの名前がぴったりだ。トランプブランドの政治をまさに体現しているからだ。

 法案の最も重要なポイントは、バラク・オバマ前大統領にちなんだ通称がある法律を無効にすることにある。オバマケアの実際の中身に対する反対意見は、これを新しい法律と置き換えたいという願望の形成にはほとんど関係していない。

 実際、オバマ氏が成立させた医療費負担適正化法(ACA)は、右派のヘリテージ財団が「ヒラリーケア(ビル・クリントン大統領の時に夫人のヒラリー氏が作成したが、成立には至らなかった医療保険法案)」の対案として1990年代に策定した市場本位の法案にかなり多くを負っている。オバマケアはまた、共和党の大統領候補だったミット・ロムニー氏がマサチューセッツ州知事時代に成立させた法案よりも、若干右寄りだった。