このように、オバマケアは保守派の考えをすでに利用していることから、共和党が現実味のある対案の策定に苦労してきたのは不思議なことではない。だが、オバマケアは雇用を破壊し米国経済を乗っ取る社会主義だと過去7年間形容してきた以上、何もしないわけにもいかなかった。ハッタリはもう通用しない。

 新たに打ち出された医療保険制度改革法案にある2つ目のトランプ的な要素は、富める者に富を再配分する効果があることだ。この法案は、米国の所得最上位2%の税負担を今後10年間で8850億ドル軽くする一方、最も貧しい階層のための支出をほぼ同額削減する内容になっている。その結果、超党派の議会予算局(CBO)によれば、医療保険に加入している米国民の数は2026年までに2400万人減るという。

 医療保険を失うこれらの人々には、トランプ氏に投票した高齢で白人の米国人が不釣り合いに高い割合で含まれることになる。これもまた、トランプ氏の典型的なおとり広告だ。公約したことと、実際にやることが大幅に異なっている。エリートは減税を享受し、貧者は保護を受けられなくなるのだ。

 トランプ氏の法案にはもう1つ、思慮の欠如という特徴がある。イスラム圏6カ国の国民に対するビザ(査証)の新規発行停止という「イスラム禁止」と同様に、あるいは中国問題や北大西洋条約機構(NATO)問題などで見せた180度の方針転換と同じように、トランプ氏は明らかに、法案の中身を把握できていなかった。

 政策は、トランプ氏自身だった。細かいことは後からやる、という具合だ。しかし、その詳細が明らかになった今、この思慮のなさは目に余る。トランプケアは医療保険制度とはほとんど関係がなく、もっぱら財政の再配分と関係している。あまりにもひどい内容であるために、この法案には米国の医療関係のロビイスト(医師、保険会社、年金生活者、病院などのためにロビー活動をする人々)がほぼ全員反対している。

 共和党の大統領にとって、企業が一致団結して自分の計画に反対するよう仕向けるというのは、簡単にできることではない。経営者たちは、何千万人もの人々を保険の傘から追い出せば、そのツケが納税者と雇用主に回ってくると分かっているのだ。