しかし、最近になって、上海の米国商工会議所の不満に代表されるように、知的財産権の侵害、資金回収難、政府の規制の突然の変更、中国企業と外資企業との差別的な扱いなどに対する不満が強まっている。

 この1、2年、これらの問題点により、米国企業にとって中国市場は以前ほど魅力的ではなくなっているとの見方が増大している。

 同時に中国経済の減速を眺め、中国市場の将来に対する見方も悲観的になっていることから、対中投資が慎重化しているとの声を耳にすることが多くなっている。ただし、実際の米国企業の対中直接投資金額は減少せず、むしろ逆に増加している。

 以上で指摘されている問題点は日本企業にとっては数年前からずっと直面してきている問題であるため、最近になってこうした問題点に関する懸念が高まっているという声は聞いたことがない。

 米国企業が最近になってこうした懸念を強めている背景についてはさらに分析を深める必要がある。

 以上のような米国企業の中国ビジネス悲観論の拡大、それに伴う対中投資姿勢の慎重化は、両国が激突することによって生じる経済的打撃に対する受け止め方の変化をもたらす。

 以前であれば深刻なダメージを懸念して、米中対立が先鋭化しないことを強く望んだ人々が、今後はそれほど強く望まなくなる可能性が高い。

 これも疑似的「相互確証破壊」の成立にとってマイナス要因である。

 以上のように、経済面における疑似的「相互確証破壊」は上記の3つの要因によって成立しにくくなる脆弱性を内包している。

 米中両国はこうした点にも慎重に配慮しながら、経済戦争への突入を回避するために、様々な努力を重ねていくことが望まれる。