仕事が落ち着くことなんてない

 そもそも、仕事や家事が落ち着くことなんて、ないんです。会社には社員のポテンシャルをぎりぎりまで引き出したいというインセンティブがありますから、究極的には「いかに社員を生かさず殺さず、限界ぎりぎりまで働かせるか」ということになります。

 なので、仕事に慣れたら異動がありますし、余力があったら仕事は増えます。人生のステージが進むごとに、プライベートでもいろいろありますよね。

 50歳になっても60歳になっても、それなりに忙しいですよ。そりゃ20代のばりばり働いている人から見たら余裕があるように見えるでしょうけど、体力や視力、頭の回転も落ちてきますから。落ち着いたと体感できるのは退職する間際か、左遷されたときくらいなものでしょう。

 家の中のことだって同じです。子供が小さいから今はまだと思っていたら、その子が難しい思春期になり、そのうち受験生になり、ようやく大学まで行ってくれたと思ったら、今度は自分の親の介護が必要になったりします。きっと人生は、常に自分が処理できるぎりぎりのレベルで忙しい、と考えていた方が無難なんですよ。

今日やるべきことを明日に延ばすな

 言ったのがエイブラハム・リンカーンなのかベンジャミン・フランクリンなのかは諸説あるようですが、「今日できることを明日に延ばすな」という格言がありますよね。今までこれ、正しいのかどうかがよく分かりませんでした。今日できることは明日もできるし、だったら明日で良いんじゃないのとも思うんですね。

 そうではなくて、「今日“やるべきこと”を明日に延ばすな」とするべきだと思います。人間は、明日の自分に対する過度な期待があるので、今日は面倒でやる気がしないことも、明日の自分はフルパワーでこなせると思いがちです。感覚的には明日の自分は別人であり、他人なんですよね。でも、今日やる気が出ない人は、多分明日もやる気はでないでしょう。

 では「やるべきこと」とは何か、それは将来の目標から逆算した、第一歩です。重要ではあるが緊急ではないこと。明日からでもできますが、今日やるべきことです。結局のところ、今日やるべきことが何なのか分からないということは、明確な将来の目標がないから、今日やるべきことが何なのか分かっていないんですよ。