マット安川 今回の尖閣諸島を巡る一連の騒動には、日本が「海洋国家」であると改めて認識させられます。

 日本の海をずっと見てきた藤木幸夫会長を迎え、港湾での政府と地方自治体の動きや現場で見る外交、また、今必要なリーダー像や国民の意識についてもお話を伺いました。

目指すは港湾の国際競争力向上。国のハブ港育成策に期待

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:藤木幸夫/前田せいめい撮影藤木 幸夫(ふじき・ゆきお)氏(右)
横浜港運協会会長、藤木企業株式会社 代表取締役会長。実業家として港湾産業の近代化に取り組み、また長く日本の港湾行政に携わる。
(撮影・前田せいめい)

藤木 近年、日本の港は国際港としての地位が目立って低下しています。

 以前であれば東アジアから米国に行く船は必ず横浜に寄ったものでしたが、今では上海や釜山から直接行ってしまう。横浜発米国行きの船もなくなりました。

 思うに原因は、日本の港がどれも地方自治体の持ち物だということにあります。横浜港だって管理主体は横浜市、つまりは「市民の港」です。勢い日本の港としての統制が取れていない。

 それに引き換え、よその国の主な港はみな国が仕切っています。上海にしても釜山にしても、ここまで国際競争力が高まったのは、国が国策として予算を注いだからにほかなりません。

中国の内需拡大政策が奏功、1-4月の都市部固定資産投資前年比30%増

中国南部深センの港〔AFPBB News

 中でも最たる例は深セン港でしょう。きっかけは鄧小平が対岸の香港との格差を見て、ここに香港に負けない港を造れと号令をかけたこと。15年前、深センの人口はたった3万人でしたが、今や1300万人の大都市に発展しています。

 諸外国に後れを取っている現状を打開しようと、日本でも国策として港を強化しようという取り組みが始まっています。

 今年、国土交通省は京浜港(東京港、横浜港、川崎港)と阪神港(神戸港、大阪港)を国際コンテナ戦略港湾に指定しました。国際ハブ港として育てるべく重点的に投資していく計画です。