鼓童の舞台。(写真提供:鼓童)

 人材不足、若手不足に直面する地方にとって、直近のテーマとなっているのが「人材づくり」だ。最近では、地域おこし協力隊などの政策によって、別の地域からの移住・定住促進が行われている。それがうまくいけば、移り住んできた人たちはその地域の人材として未来を担っていけるだろう。

 このような施策でポイントとなるのが、若者を移住・定住させるほどの“魅力”を地域が差し出せるかどうかだ。インフラが行き渡り、地域の差が生まれにくい成熟した時代だからこそ、「この地域にしかない」と思える魅力、オーセンティシティ(真正性)をともなった“本物”を感じさせる魅力を差し出さなければ、移り住みたいという欲求を引き起こすことはできない。

 なかなかハードルの高い問題だが、実は新潟県の佐渡島では、モデルケースとなる事例が起きている。太鼓芸能集団「鼓童」による活動だ。

 一体それはどんなものなのか。地域経済の専門家である國學院大學経済学部の山本健太准教授に話を聞いた。

國學院大學経済学部准教授の山本健太氏。博士(理学)。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。九州国際大学特任助教、同助教、同准教授を経て現職。地理学の視点から日本の経済・地域経済の振興を研究する。「ひたすら歩き、話を聞くことで地域の経済が見えてくる」を信条に、フィールドワークを中心とした実証主義に基づく研究を続ける気鋭の地域経済専門家。

佐渡島に残る伝統が、“太鼓集団”を生み出した

──地域の資源をもとに人材を生み出す事例として、「鼓童」の活動を取り上げていきます。鼓童は、佐渡島を拠点に1981年より活動する国際的な太鼓芸能集団ですね。そもそも、なぜ佐渡島なのでしょうか。