標的は1930年代は反ユダヤ、現在は反イスラム

 興味深いのは、本書に出てくるナチス研究者のガブリエル・ローゼンフィエルド教授(フェアフィールド大学)が1930年代の状況と現在の状況との間に類似性があると分析している点だ。

 同教授は、以下のように指摘している。

 「1930年代、第1次世界大戦後、欧州に吹き荒れた経済不況下でスケープゴート(生贄のヤギ)にされたのはユダヤ人だった。ユダヤ人は群を抜いて目立つ唯一のマイノリティだった。数ではなく登場感として目立ったのだ」

 「反ユダヤ主義は国境を越えてやって来る経済的脅威に対抗する象徴になっていった。ナチスはそこに目をつけた」

 「現在、欧米で起きている反イスラム現象は、その意味では1930年代の反ユダヤに類似したところがある。イスラム教徒は自分たちの安全を脅かす社会的、経済的な脅威になっている」

 「イスラム教徒たちはスケープゴートにされているのだ。ネオナチは、反イスラムを前面に押し出しながら実際には白人優越主義という究極の目標を達成しようとしている」

「アルト・ライト」と「ナチス」の共通性

 本書は、第1次世界大戦までは全くの無名な一青年だったヒトラーが戦後には、バイエルン州で、国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)指導者としてアーリア民族を中心に据えた人種主義を掲げて進出していく過程を写真をふんだんに使いながら解説している。

 ところが「Evil on the Rise Again」(悪、再び舞い上がる)の章では、米国内で活発化している米白人優越主義者団体「アルト・ライト」のリーダーが2016年12月、テキサス州で演説する写真を掲載。写真にはこんな説明文がついている。

 「アルト・ライトは我々はナチスとは異なると主張している。だが主張するファシズム、反ユダヤ、反非キリスト教徒、右翼ポピュリズムはナチスとほぼ同じである。我々はイスラム過激派から祖国を守るのだというスローガンを掲げたネオナチ以外の何者でもない」

 ネオナチの活動は、ノースカロライナ、イリノイ、サウスカロライナ、ジョージア各州とトランプ氏がヒラリー・クリントン民主党大統領を破った南部、中西部で目立っている。

 そして本書は、こうした動きがフランス、ドイツ、スロバキア、スペイン、ノルウェーなど欧州各地でも出ていることを指摘、「世界各地でヒトラーのレガシーは抱擁されている。我々は自由を守るためにこれら極右と戦わねばならない」と訴えている。