主要産油国の減産ゲームに飽き始めた市場

需要の減少が減産効果を打ち消しに

2017.02.17(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49197
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 このように需給が軟調になっている米国で、思わぬ「伏兵」が頭をもたげつつある。

 1月に米エネルギー省が、「2月末までに最大1000万バレル規模の『戦略国家備蓄(SPR)』の原油を市場に放出する」ことを決定したからである。

 SPRとは、1973年からの第1次石油危機の教訓から原油の輸入停止などの非常事態に備え純輸入量の90日分の原油を政府が備蓄する制度である(日本も政府が90日分の原油を備蓄している)。米国では現在約7億バレルの原油が備蓄されているが、シェール革命により原油の輸入量が激減したことや財政赤字の穴埋めを行うとの観点から、2015年10月の議会で「5800万バレル分の原油を2017年から8年をかけて放出する」ことを決定していた。

 SPR原油は、1991年(湾岸戦争時)に1720万バレル、2005年(ハリケーン「カトリーナ」の襲来時)に1100万バレル、2011年(リビア政変時)に3060万バレル放出されているが、いずれも原油価格の「沈静化」に役立っている。

 市場が膠着状態にあるときには「伏兵」が大きな変化をもたらすことが少なくない。過去の放出時と異なり、今回の放出は望まざる原油価格の低下を招くかもしれない。

市場で急速に「下げ」の動きが出る兆し

 最後に市場の動向を見てみよう。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、過去最高を更新していたヘッジファンドによるWTI先物とオプションの買越残高(7日時点)が1カ月ぶりに減少に転じている。

 これまで市場では「OPECが世界的な原油供給過剰を緩和する」との楽観的な見方が大勢だった。だが、それが縮小し始めているのである。1月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る上昇になったことでFRBの3月利上げの可能性が出てきたことも、原油価格への下押し圧力になりつつある。

 2月14日付ブルームバーグは「投資家とOPECの蜜月関係に陰り」と報じた。現在の取引レンジに疲労感が出始めた市場で、急速に下げの動きが出る兆しが高まっているのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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