深刻な悩み、どうしても太りたい人へのアドバイス

「太れない」「痩せられない」の科学(後篇)

2017.02.17(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

――太ることを目指すときの、心がけはありますか。

鷲澤 多くの人は、食べものや食べ方を改めることで、太ろうとすると思います。その際、健康を害さない範囲で取り組んでいただきたいのです。体調を崩すような食べ方はよくありません。そうなるくらいなら、よほど脂肪注入手術でもするほうがよいといえます。

――無理に体重を増やそうとするのは、良くないということでしょうか。

鷲澤尚宏(わしざわなおひろ)氏。東邦大学医療センター大森病院栄養治療センター部長。医学部臨床支援室教授。医学博士。1986年、東邦大学医学部卒業。専門は消化器外科、栄養支援。医師、看護師、薬剤師、栄養士などによる栄養サポートチーム(NST)のあり方を含め、入院患者に最良の栄養療法を提供するための方法なども検討している。

鷲澤 ええ。生活の中で、自然な形で“軟着陸”できることが大切です。太ることに取り組んで目的をかなえて、心が幸せになれば、それはよいと思います。けれども、我慢を強いられる苦しい日々では、まず取り組みは続きません。

 習慣化されている生活パターンが変わることを「行動変容」といいますが、このことも当てはまります。自分の心が目指す方向に向いてこそ、行動もその方向に向いていくものです。

――体重を増やすことが、体への負担になりはしないか、と思う人もいる気がします。

鷲澤 自分がどの程度まで食べる量や食べ方を変えても問題ないか、そうした「許容範囲」を知ることが大切になります。たとえば、許容範囲を超えるペースで体重を増やしてしまうと、膝を悪くしてしまうかもしれません。

 けれども、その許容範囲を自分で知るのは難しいことです。「太りたい」「ガッチリした体型になりたい」といった夢や希望を自分自身で持っていますからね。客観的に評価してくださる身近な方に見てもらうのがより良い方法です。

問題は筋肉量低下、判断する方法は?

――「太るべき人」もいるのでしょうか。たとえば、痩せている人の中には、階段がきつかったり、疲れやすかったりと、生活に支障をきたしている人もいると思います。そういう人は、積極的に太るべきでしょうか。

鷲澤 病院の患者さんには、階段の昇り降りがきつかったり、荷物を持つのがつらかったりすることを訴えるとき、「痩せちゃって、体重が戻らないんですよ」とおっしゃる方がいます。おそらく「力が弱くなったから、太らないと」と、お考えになっているのだと思います。

 この考え方には当たっている部分はあると思います。ただし、少し踏み込んで「痩せて力が弱くなった」ことを考えてみると、その間には「筋肉量が落ちた」ということがあります。力が弱いのは、筋肉量が少ないからですが、それを「痩せている」と表現なさっているわけです。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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