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トランプ大統領、メイ英首相と会談 「特別な関係」強調

米ホワイトハウスの大統領執務室にあるウィンストン・チャーチル元英首相の胸像の前で握手するドナルド・トランプ米大統領(右)とテリーザ・メイ英首相(2017年1月27日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News

(文:村上 政俊)

 トランプ外交が本格的に始動したが、その背景にある考え方は極めて常識的であり、同盟国日本としては大いに歓迎すべき滑り出しだ。トランプ外交の最大の特徴は同盟国重視の姿勢であり、これを端的に示すのが外国首脳の訪問受け入れ順序だ。

まずは米英同盟の強化から

 1月20日のトランプ政権発足後にまずワシントンを訪れたのは、アメリカにとって最も緊密な同盟国であるべきイギリスの首相メイだった。オバマによって大統領執務室から不当にも撤去されていたチャーチルの胸像がトランプによって元の地位を無事回復。トランプ、メイ、チャーチルの「3人」で撮影された集合写真は、米英同盟に新たな息吹が吹き込まれたことを象徴していた。

 そもそもチャーチルはフランクリン・ルーズベルトにぴったりと寄り添って連合国を第2次世界大戦の戦勝に導いたアメリカの大恩人だ。そんなチャーチルを追い出すとはオバマもとんだ忘恩の徒である。なおルーズベルトもチャーチルの帝国主義者としての顔を内心苦々しく思い、むしろ共産主義国家ソ連の独裁者スターリンとの方が、馬が合うと思っていたようだ。

 ルーズベルトにしてもオバマにしても、民主党の大統領はチャーチルのことがどうもお好きではないらしい。逆に共和党トランプとチャーチルと同じ保守党メイの仲を取り持ったのがチャーチルだったということになる。

 米英同盟を重視するトランプの姿勢は共和党主流派とも軌を一にする。メイが外国首脳の中で最初にトランプのもとを訪れたことは、トランプが従前の2国間同盟を重視していることの表れであり、アメリカから大西洋に架かる米英同盟、太平洋に架かる日米同盟というアナロジーで考えれば、日本にとっても喜ばしいことだ。

 先月、我が国はこのイギリスとの間で日英ACSA(物品役務相互提供協定)に署名したが、日本とイギリスの防衛協力強化はこうした考えとシンクロしており、現代の日英同盟ともいうべきレベルに関係が徐々に深化しつつある。なお、イギリス側の署名者は、昨年のEU離脱国民投票で離脱派の先頭に立ち、『チャーチル・ファクター』という本を著すほどチャーチルを尊敬する外務大臣ボリス・ジョンソンだった。

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