家事の担い手が増えた安心感で仕事に注力できる

 タスカジがサービスインしたのは2014年7月。“タスカジさん”と呼ばれるハウスキーパーがプロフィールと勤務可能日を公開し、ユーザーがそこから条件に合うハウスキーパーを選んで、直接連絡を取り合うCtoC型のサービスだ。現在、約400名のハウスキーパーに対して、ユーザーは約8500名。順調な伸びを見せているという。その魅力は、実際に仕事を頼んだユーザーによるレビューが公開されることで、信頼性がしっかりと担保されていることだろう。

掃除、整理収納、作り置きなど依頼したい内容を絞り込むこともできる。依頼者がリモートワークで在宅中の平日午前に、タスカジさんに来てもらうケースもあるという

 和田氏自身もタスカジのヘビーユーザーだ。家事にとらわれる時間を大幅に減らしたことで、仕事への意識は大きく変わったという。

「家事をしていたころは、帰宅後のために体力を残しておかなければならず、八分目までしか仕事をしていないような感覚がありました。でも、肩の荷を下ろしたことで、どんどんチャレンジできるようになりましたね。仕事で予定外のことが起きてもタスカジさんがいてくれるから大丈夫だと思うと、安心して前に進めるんです」

 実際にユーザーからも、「短時間勤務からフルタイム勤務に戻す勇気が出た」「断り続けてきた昇進のオファーを受ける決心をした」など、キャリアに対して前向きになったという報告が相次いでいるという。

キャリア志向の女性を産後も戦力化する手段

 昨今、育児休暇から復職した後に短時間勤務を選択しない女性は増えつつある、と和田氏は言う。

「短時間勤務制度はセーフティネット。できることなら、短時間勤務を取らずにチャレンジしていこうという考え方が出てきています。育休中に勉強会に参加したり、資格を取ったりするなど、復職後のキャリアを視野に入れた準備をする方も増えています。子どもを産んでも、しっかり仕事をしたいという女性はたくさんいるんですよ」

 問題は、このような女性たちの存在に気付いていない企業、または気付いていても彼女たちをうまく戦力化できていない企業が多いことだ。

「企業側が、産後の女性にはあまり仕事を振らない方が親切なんじゃないかと遠慮して、彼女たちをキャリアコースから外してしまうケースが多いですね。善意から、いわゆる“マミートラック”(※昇進とは縁遠く、責任の軽いキャリアコースのこと)に乗せてしまうんです」

 たしかに、企業の立場も複雑だ。このご時世、育児休暇や短時間勤務を取らせない企業だと言われてしまえばダメージは大きい。それゆえ、産後の女性に家事代行サービスやベビーシッター使ってまで仕事に打ち込むように、とは勧めづらい側面がある。和田氏は、企業から相談を持ちかけられたり、女性社員たちを啓蒙するための講演を依頼されたりすることが増えてきたそうだ。

「確かに短時間勤務などが必要なこともありますが、それ以外の選択肢を提供することも大事だと思うんです。最近は、家事代行サービスを福利厚生に導入する企業もありますよ。これは企業から女性たちに対して『あなたたちが思い切り仕事をするために必要な生活も応援しますよ』というメッセージですよね」

長時間労働の是正と家事代行サービスで社会は変わる

 和田氏が問題視しているのは、依然として「家事は夫婦の問題ではなく、女性の問題だ」という認識が世間一般に残っていることだ。また、家事をアウトソーシングすることはできても、育児の負担が女性だけにのしかかっていることも改善すべき点だと言う。

「女性側に偏っている負担を減らすには夫の巻き込みが必要なのですが、そのためには男性側の長時間労働を是正しなければなりません。長時間労働を強いられている男性は、家事・育児の問題に目を向ける余裕すらないんですよね。家事・育児にもっとコミットしたいと思っている男性は増えているんですよ。でも、今の状態ではとにかく余裕がないのです」

 働き方改革が始まり、長時間労働の是正に向けて政府が動くことになった。それでも家事の担い手が不足している状況は、タスカジのような家事代行サービスがサポートする。

「この両輪が回ることで、社会は変わり始めます。これからも政府の動きとペースを合わせてビジネスを展開していきたいですね」