(英エコノミスト誌 2017年1月28日号)

ハイパーインフレのベネズエラ、新紙幣の流通開始も混乱続く

新しく発行された500ボリバル札と5000ボリバル札。ベネズエラ・カラカスで(2017年1月16日撮影)。(c)AFP/JUAN BARRETO〔AFPBB News

ニコラス・マドゥロ大統領は経済危機から間違った結論を引き出している。

 ベネズエラ内務司法省身分証明・移民・外国人登録局(SAIME)のすすけた本部の外には、平日の朝になると必ず、何十人もの人が絶望した表情で行列を作る。物資の不足と暴力の横行のせいでこの国での暮らしが耐えがたいものになり、どこか別の国に行けるようパスポートの発行を申請する人が増えているのだ。

 申請はほとんどが却下される。政府は昨年9月に、新しいパスポートをラミネート加工する樹脂を使い切ってしまった。「8カ月待つことになるかもしれないって言われたよ!」。申請窓口から出てきたマルティンさんは、いらだたしげにそう言った。250ドルの袖の下を渡せば、いくらか早く手に入れられるだろう。

 絶望感が強まる中、ベネズエラの経済を破綻させ、民主主義を破壊する政策を採用した「ボリバル革命」体制の頑なな姿勢も強まっている。この1月にロイター通信にリークされた中央銀行の推計によれば、ベネズエラの経済規模は昨年1年間で18.6%縮小した(図参照)。インフレ率(消費者物価上昇率)は800%に達している。

 これらは速報値であり、改定される可能性がある。永遠に公表されない可能性もある(中央銀行は1年以上前に、完全な経済指標を報告するのをやめてしまった)。上記のインフレ率の推計値は、国際通貨基金(IMF)による試算に近い。そのIMFは、今年のインフレ率が2200%に達すると見込んでいる。

 本誌エコノミストの姉妹会社エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、昨年の経済規模の縮小率は13.7%だったと見ている。それでも、ユーロ危機のピーク時にギリシャが経験した国内総生産(GDP)の落ち込みをはるかに上回るスピードとなる。ベネズエラは、2001年には南米で最も裕福な国だったが、今では最貧国の1つだ。