(英エコノミスト誌 2017年1月21日号)

習主席、保護主義に警鐘 トランプ新政権にらみ、ダボス会議で講演

スイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で講演する中国の習近平国家主席(2017年1月17日撮影)。(c)AFP/FABRICE COFFRINI〔AFPBB News

習近平国家主席は、中国は安定の礎だと主張したが、本当に世界のリーダーになるつもりがあるのかは疑問だ。

 スイスのリゾート地ダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF、通称「ダボス会議」)の参加者は、政治家をロックスターのようにもてはやすことが多い。だが、中国の習近平氏を崇めるように出迎えた1月17日の様子はまさに異例だった。

 国際的な企業や政界のエリートが一堂に会するWEF年次総会に、中国の国家主席が参加するのは初めてだった。文学作品への言及をアクセントにする演説を習氏がいつもの陰鬱な調子で始めた(かさばるヘッドホンを介して提供された翻訳も同じくらい単調だった)ときには、オーバーフロー・ルーム*1さえもが満員になった。

 新しい話はほとんどなかったものの、観衆はとにかく喜んで聴いていた。何しろ、世界が不確実性に覆われ、資本主義者が不安を抱いているこの時期に、世界最強の共産主義者が壇上に立ち、自分はグローバル化と開かれた市場の擁護者だと明言したのだ。

 習氏はドナルド・トランプ氏の名前を出さず、米国という国名さえも口にしなかったが、メッセージは明快だった。「貿易戦争をしたところで誰も勝者にならない」。中国製品に重い関税を課すなど様々な重商主義的行動をちらつかせて脅しをかけているトランプ氏への口撃だ。習氏はさらに、保護主義を「暗い部屋に閉じこもる」ことになぞらえた。聴衆は喜びながらこの言葉を繰り返していた。

 この1年、とりわけ米国と英国で政治が意外な展開を見せていただけに、聴衆の多くは習氏の言葉にほっとしているように見受けられた。

 習氏はまた、「矛盾に満ちた世界」を表現するためにディケンズの作品の一節を引用した。「それは最良の時代であり、最悪の時代でもあった」という『二都物語』の冒頭だ。

*1=講演会などで、会場に入りきれない人が中継画面で中の様子を見られる部屋のこと