警察の「捜査」に問題はなかったのか? 『殺人犯はそこにいる』の著者は独自の取材で真犯人に迫った(写真はイメージ)

 僕の中には「情熱」はない。そのことを僕は、いつも残念に思う。

 僕の中にも、熱い気持ちが芽生えることは、たまにある。こうしなければ、ああしたい、やってやるぞ、というような強い気持ちが生まれることは、ごく稀にあるのだ。しかし、僕はいつも、自分の限界でストップしてしまう。僕自身が、ここが限界だ、と感じているところで諦めてしまう。僕は、今の僕にできることの範囲内でしか、熱い気持ちが持続しない。僕は、今の自分の限界を超えて、できないかもしれないことに挑戦する気持ちを「情熱」と呼びたい。そういう意味での「情熱」は、僕の中には存在しない。

 だから、そういう風に生きられる人の話を読むと、凄い人がいるという高揚と共に、自分にはできないなという落胆を覚える。そして、まあ仕方ないか、と思うのだ。

 限界を超えているだろうと思える努力を続けることで、とてつもない成果を生み出した者たちを描く3冊を紹介しようと思う。

プロの捜査を「取材」が上回った

『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』

殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件
(清水潔著、新潮社)

 書店の店頭で、「文庫X」と名付けられた謎の本が大いに話題になった。オリジナルの帯で表紙を隠し、中身が分からない状態で販売するという企画だったが、その中身が、これから紹介する『殺人犯はそこにいる』である。

 とんでもない作品だ。読んでいただければ、僕がなぜこの作品を「文庫X」として売り出したのか、その理由は分かっていただけるはずだ。全日本人が読むべき、驚愕の一冊である。

 関東で起こったある未解決事件を扱ったノンフィクションだ。ここで描かれる事実は、僕らが生きている現実の根底を激しく揺さぶる。