ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた銀河団「SDSS J1038+4849」。重力レンズの影響で、2つの目と鼻があり微笑んでいるように見える。この中心にダークマターがあるが、写真には写らないと考えられている。(写真:NASA

 前回2016年12月の記事「正体に近づいた? 宇宙の長年の謎、ダークマター」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48735)では、宇宙空間を漂うダークマターについて解説しました。国際宇宙ステーションに搭載された粒子検出器がダークマターの形跡らしきデータを捉えたのです。

 けれどもそれと同じころ、「ダークマターは存在しない」と主張する奇抜な研究が注目を集めました。「エントロピック重力理論」と呼ばれるこの物理学理論は、全く新しい原理に基づく重力理論で、ダークマターをはじめとする現代物理学の難問を解決するというのです。

 もしもこの主張が本当ならば、これはニュートンとアインシュタインに次ぐ、第3の重力革命です。現時点では正しいとも正しくないとも結論できませんが、面白いので紹介しましょう。

新しい重力理論よ、目覚めよ

 17世紀、アイザック・ニュートン(1643-1727)は「万有引力の法則」を発見し、月や惑星やリンゴの運動を説明してのけました。人々はびっくりしました。

 20世紀、アルベルト・アインシュタイン(1879-1955)は「相対性理論」を発表し、空間はぐにゃぐにゃ時間はへろへろ伸び縮みするのだと明らかにしました。こういう伸び縮みの効果が重力現象だというのです。人々はびっくりしました。

 21世紀、そろそろ新しい重力理論が現われて、人々をびっくりさせてもいいのでは、と期待が高まっています。なぜなら、古い理論では説明できない事柄が、だんだん溜まってきたからです。