だから、Aさんのしたことに感激して、それがいかに素晴らしいことかを伝えました。ところがAさんの返事は、「そんな大したことはしていませんよ。だって挨拶しただけですよ。挨拶って当たり前のことじゃないですか?」というものでした。

「トップ自らがコミットしないと会社は変わらない」とよく聞きます。私もそう考えていた口でした。ところが、Aさんはトップでも管理職でもありません。つまり、誰もが組織を変える可能性を持っているということが言えるかもしれません。

 それが実現できる条件って何だろうとさらにAさんに話を伺うと、「私は今の会社が大好きなんです。だから良くなってほしいと思うんです。そのためなら自分でできることは何でもしようって思います」とおっしゃいました。そう思わせる会社も素晴らしいし、そう思えるAさんも素敵です。もしかしたら、1人の従業員が会社を変えるための条件は“相思相愛”なのかもしれません。

自分の強みには気づきにくい

 今回はこの話を通して、2つのことを皆さんにお伝えしたいと思います。

 1つ目は、1人の力でも組織は変えられるんだということ。

 2つ目は、自分の強みには気づきにくいということです。以上のエピソードから分かるように、Aさんには、人を巻き込んで協力体制を作る力があります。ところが、Aさんは「大したことはしていません」とおっしゃいます。Aさんはそれを強みだとは感じてなかったのです。自分にとって当たり前にできてしまうことは、あまりに当たり前すぎて、強みと思えないものだったりするのです。

 皆さんも「すごいですね!」と言われて、「全然すごくないんだけど・・・」と思ったことありませんか? でも、それは自分の本当の強みに気づいていないだけかもしれません。もっと胸を張って自信を持ってみてはいかがでしょうか。