(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年1月3日付)

トランプ氏、報復留保のプーチン氏を称賛 「とても賢い」

ドナルド・トランプ次期米大統領(左)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(2016年12月30日作成)。(c)AFP/DON EMMERT AND Natalia KOLESNIKOVA〔AFPBB News

 米国は地球規模のトレンドを仕掛けることに慣れている。しかし、ドナルド・トランプ氏が「米国を再び偉大にする」と公約する数年も前に、中国、ロシア、トルコの3カ国が「懐古趣味ナショナリズム」の流行を確立していた。

 中国では習近平国家主席が「中華民族の偉大なる復興」を主導するという表現で、トランプ氏の有名な公約の中国版を2012年に打ち出していた。同じ年に、ウラジーミル・プーチン氏が大統領としてクレムリンに返り咲き、「ロシアを再び偉大な国にする」と簡単に要約できる国家プロジェクトに着手した。一方、トルコではレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、オスマン帝国時代の栄光から国全体が刺激を受けることを望んでいる。

 中国、トルコ、ロシアの政治状況からは、懐古趣味ナショナリズムの危険性について明らかな警告を読み取ることができる。この3カ国では、国としての偉大さを復活させたいという思いが、国外の敵対勢力に対抗しようという政府主導の運動や、反国家的な「内なる敵」の注視と一体化しているからだ。

 米国には簡単には変更できない制度や慣習があり、報道の自由もあるため、トランプ氏の懐古趣味ナショナリズムがプーチン氏や習氏、エルドアン氏らのようなやり方で国内の政敵をねじ伏せることははるかに難しいだろう。だが、民主主義国はどういうわけか比較的マイルドな懐古趣味ナショナリズムに毒されずに済むだろうという見方は、明らかに間違っている。その理由は、日本やインド、ハンガリー、英国を見ればすぐに分かる。

 日本の安倍晋三首相は、国の再興を目指して精力的なキャンペーンを主導している。日本をアジアの強国に押し上げた明治維新に触発されたのだという。インドではナレンドラ・モディ首相が、インドの近代化を目指すと同時に過去――栄光に満ちた、そして所々神話化されている過去――についてのヒンズー教徒のプライドに訴えかける、ヒンズー・ナショナリズムの運動を率いている。ハンガリーでは、ナショナリストのビクトル・オルバン首相が、第1世界大戦後に失った領土に物欲しげなまなざしを注いでいる。

 そして、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)がある。英国がEU離脱を決断する際にも懐古趣味ナショナリズムがそれなりの役割を担った。離脱派が「グローバルな英国」を強調し、英国が28カ国から成る欧州クラブの一員にすぎない時代ではなく世界屈指の大国だった時代の記憶に訴えかけたのだ。