現在、中国は日本や米国からの牛肉輸入を規制しています。そのため、外国産の牛肉といったらオーストラリア産しかありません。おいしい牛肉を扱っている店もあることはありますが、全体として中国の牛肉料理はあまりおいしくありません。焼き肉サイズならまだしも、ステーキサイズとなるとほぼ絶望的です。

 そうした国内状況を反映したせいなのか、中国人は和牛に対して非常に高い関心を抱いています。松阪牛だけでなく神戸牛や近江牛など、和牛ブランドをやけに細かく把握しており、「日本の松阪牛ってどれだけおいしいの?」と、あまり松阪牛を食べたことがない筆者に難しい質問を吹っかけてくる中国人もいます。

 中国国内ではどうあっても食べることができない幻の食べ物ということもあり、訪日旅行では和牛を食べに行くことを主目的にする中国人が、特に女性が大勢います。そして実際に日本で和牛を食べた彼女らの感想は、上記の通り大満足そのもので、これ以上ないくらい絶賛し続けるのです。中には、人に会うたびに「和牛はうまかった」と言ってまわる人もいます。筆者はそういう人に会うと念のため「日本人は毎日高級和牛を食べてるわけじゃないよ」と釘を刺すようにしています。

 最後に、和牛ブランドが中国でどれだけ浸透しているかを示す筆者の体験談を1つ紹介しましょう。

 ある日、上海で昼食に台湾料理屋に立ち寄ったところ、メニューになぜか「松阪豚肉」というものがありました。これは何かと店主に聞いたところ、「日本で松阪牛って有名なんでしょ」とだけ言われました。味はまぁ悪くありませんでしたけど。

【訂正】記事初出時の「松坂牛」を「松阪牛」に修正しました(2017年1月5日)

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