その背景には、依然として契約社員、派遣労働、アルバイトなど不安定雇用が多いこと、少子高齢化の進展で年金制度への信頼感が失われていることなどもあろう。

「ドミノ・ピザ」の大騒動が物語るもの

 昨年のクリスマスイブに、全国展開している宅配ピザ店「ドミノ・ピザ」で大騒動が発生した。私の自宅の近所にも同店があるが、持ち帰りの場合には1枚を無料で進呈するというサービスが常時行われている。

 そのためもあったのだろう。予約が殺到し、店舗によっては1時間も待たされ、その行列の整理のために警察官まで動員するという騒ぎになった。あまりの待ち時間の長さに、客が怒り出し、店員が泣いてしまう店舗もあったという。同社は、「多くのお客様に配達遅延や店頭受け渡し遅延でご迷惑をおかけいたしました。今後よりよいサービスを提供できるように、スタッフ一同で取り組んでまいります。このたびは大変申し訳ございませんでした」というお詫びを出す始末であった。

 このサービスというのは、要するに安売りということだ。それに多くの人が飛びついた。それが同社の想定以上だったということである。同社を責めるつもりはまったくない。それほど誰もが家計を考え、より安いものを欲しているということだ。ピザ店は他にもある。それでも1時間、あるいはそれ以上待って同社のピザを求めたのだ。国民の暮らしの現状がよく表れているのではないか。

契約社員にもボーナスを

 私の知り合いに、契約社員として同じ会社でもう10年も働いている人がいる。働き方は、正社員とまったく変わりがない。各種の社会保険にも加入している。決定的な違いは、ボーナスが支給されないということだ。

 会社勤めの人間にとって、何が一番嬉しいかと言えば、ボーナスである。若い人など、月々の給与はそう高くない。というより、食っていくのが精いっぱいというものだ。それは私がサラリーマンだった半世紀前と同じである。ボーナスがあるからスーツも買えたし、正月に里帰りもできた。