ドイツ首都でもはしか流行、1歳半の男児死亡

ドイツ首都ベルリンで、はしかの予防接種を受ける男性〔AFPBB News

 専門医制度変更への議論が喧しい。新専門医制度の2017年度実施は見送られ、日本専門医機構の理事は変更となった。

 専門医制度の問題点については数多くあるが、ここでは医師の偏在についての議論を取り上げたい。曰く、「医師の地域偏在が深刻化しており、その是正のために専門医制度を変更しないといけない」というものだ。

 そもそも医師の教育と地域偏在は無関係であるが、ここでは措く。私が異常だと感じるのは、厚生労働省、大学医学部、日本医師会に至るまでが、データの提示なしに「日本の医師の偏在が悪化している。どうして若者が地方へ行かないのか」と口々に言うことだ。

 特に槍玉に挙げられるのが、2004年に始まった臨床研修制度だ。

医師数の格差は解消に向かっている!

 この制度のせいで、大学医局に属さない病院へ就職する新卒医学生が増えたために、大学医局が支えていた地域医療が崩壊した、というのがその主旨である。

 ここで、あるデータを紹介したい。公開されている市町村ごとの医師数、人口データを元に、医師の偏在を定量的に評価したものだ。

 使ったのは、「ジニ係数」と呼ばれる、所得格差を表す指標であり、数字が大きいほど格差が大きい。通常は所得で行うところを、市町村人口あたり医師数に置き換えて、ジニ係数を計算した。

 すると、驚くべきことに、新臨床研修制度が始まった2004年から2014年まで、ジニ係数は0.60から0.56と、ジニ係数は減少傾向にあった(図)。

 つまり、医師の地域偏在は、拡大するどころか、むしろ縮小している可能性すらあるのだ。これは、私の実感とも一致する。

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48672