French former Prime minister and candidate in the Les Republicains party primary ahead of the presidential election Alain Juppe delivers a speech during a campaign meeting, on October 19, 2016 in Rennes, western France. (c)AFP/LOIC VENANCE

 先月、とある禅の道場に1週間こもり、禅の修行をさせていただいた。

 私は公認会計士・税理士・心理カウンセラーとして数字と人の心を扱う経営コンサルティングを業としているが、この修行の経験は経営やリーダーの育成を考えるうえで非常に興味深いものであった。

 以下は私の個人的な体験談や私見であって、一般論として禅について何かを語る意図ではないことをあらかじめご了解いただきたい。

 修行は老師のご指導のもと、朝5時から夜の10時まで禅堂で座り、雑念を排除して、ただ「今」に集中するというものである。

 雑念を排除するためには、五感で感じていることに強く意識を集中する。

雑念を排除するより五感に集中

 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚のいずれかで感じていることに強く意識を向けて集中した状態になると、ほかのことを考えることはできなくなる。

 つまり、雑念を排除して無の状態になろうとするよりも、五感で感じていることに強く意識を向ける方が雑念を排除しやすい。

 そのため、雑念が入ってこない状態を維持すべく、今この瞬間に五感で感じていることに意識を集中し続ける。

 静かな禅堂で、白い壁に向かって座るため、普段なら刺激にあふれている視覚と聴覚にはほとんど刺激が入ってこなくなる。感じられる刺激は呼吸によって胸や腹が動く感覚と、鼻から空気が出たり入ったりする感覚。

 そして、あぐらをかいて座っている足腰の感覚のみである。そのため、呼吸に意識を向け集中することで、「今」に集中する。

 この状態で朝5時から夜10時まで、食事の時間を除いた約15時間を過ごす。これが1週間続いた。

 これまで仕事でも勉強でもスポーツでも、それなりにハードな状況に耐えてきたため、ある程度のことには耐えられる自信があった。

 しかし、そういったハードさに耐えるということは強い刺激に耐えるということであり、刺激のないことに耐えるというこの修行は質の違う過酷さがあった。

 修行開始から3日目くらいまでは雑念との戦いとなる。雑念が出たら呼吸に意識を向け集中することで、雑念を消していく。これを繰り返すことで雑念への対処のコツが分かっていく。