自動車がタダになる?IT企業が一変させる自動車業界
自動運転がもたらす費用の低廉化とセキュリティの重要性
シェアリングサービスの普及と自動運転による無人化
近年、日本の都市部では、駐車場の確保など自動車の維持コストがかさむこと、他の交通網が発達していることなどからカーシェアの利用が拡大している。一方で、海外では自家用車で他人を輸送して利益を上げたいドライバーと、これを利用したいユーザーを取り持つ、いわゆるライドシェアサービスも普及しつつある。
アメリカのライドシェア大手「Uber」は自動運転車両の開発に取り組んでおり、将来的にはロボットタクシー(無人タクシー)の提供を目指している。
このように、所有から利用へ、有人から無人へと自動車のあり方が変化することで、時間にしてわずか5%にとどまっている自動車の稼働率が上がり、約8倍になるとも試算されている。
かつて自動車メーカーが利用料をユーザーに転嫁しなければ成立させられなかったサービスを、いまやIT大手は無料で実現しようとしている。さらに情報価値、ひいては広告価値を高められたなら、車両の稼働率の向上とあいまって、シェアリングサービスにおけるユーザー負担費用の低廉化を進めることができるだろう。将来的にはシェリングサービス利用料の無料化も見えてくる可能性がある。
高まるセキュリティへの懸念と求められる対策
IoT×自動車では、自動車そのものが端末として無線ネットワークに常時接続されるため、そこからハッキングなど不正アクセスが行われる可能性がある。
自動車大手、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、2015年にジープなどの車種で140万台のリコールを行った。これは、無線を介して車体にアクセス、遠隔操作できるという問題が発見されたためで、実際に15キロメートル以上離れたところからエンジンやワイパーを制御できることが確認された。
幸いにもこの場合は、発見したのがセキュリティの専門家であったため、セキュリティホールの公表前にFCAに連絡が入り、対策が促された。
これが悪用されていたなら、どのような結果が生じていただろうか。
たとえば日本でも、海外からの大規模なサイバーアタックにより、企業のホームページが書き換えられたり、個人情報が抜き取られるなどの事案が発生している。もしも自動車へのハッキングが組織的に行われたとしたら、一斉に事故が発生して、交通網は混乱するだろう。さらに、自動運転車が狙われた場合、同時多発テロにも利用されかねない。
アメリカの自動車メーカー、テスラモータースでは、セキュリティホールを潰すために2015年からバグの発見・報告に懸賞金をかけており、FCAも同様の取り組みを開始している。今後、この動きは自動車メーカー各社に広がっていくだろう。