「アメリカの平和」の時代が崩れてきた。日本に果たせる役割はあるのだろうか(写真はイメージ)

 アメリカの辞書出版社メリアム・ウェブスター社のツイッターによると、同社のウェブサイトで今年最も検索された単語は "fascism" だという。ウェブスター社は「ファシズムが今年の言葉になるのを防ぐために、他の単語を検索してほしい」と利用者に呼びかけている。

 これは2つのことを示している。1つはドナルド・トランプやマリーヌ・ルペン(フランス国民戦線の党首)などのポピュリストが世界的に政権に近づき、それに反対する人々が彼らを「ファシスト」と呼んでいること、もう1つは多くの人が「ファシズム」の意味を知らないことだ。それは再来するのだろうか?

危機の時代に影響力を増す「ファシズム2.0」

 まずファシズムとは何だろうか。ウェブスターの定義によると、それは「国家や民族を個人より優先する政治思想や運動や制度で、独裁者の指導する中央集権的な専制政治によって社会的・経済的統制や反対派の暴力的な弾圧を行う」勢力を意味する。

 この定義に照らすとトランプはファシストとは言えないし、「安倍はファシストだ」というように安易に使うことは慎むべきだ。しかし今、世界に広がっているポピュリズムやナショナリズムにはファシズムと似た面があることも事実なので、それをファシズム2.0と呼ぼう。

 ファシズムの語源はイタリア語で「団結」という意味で、ムッソリーニの「国家ファシスト党」が起源だが、史上最大のファシストとして知られているのは、いうまでもなくヒトラーである。ファシストが絶対君主と区別される特徴は、彼が選挙で選ばれたことで、この点でトランプはヒトラーに似ている。

 1930年代にも各国で独裁政治を主張するファシストが選挙で勝利し、ドイツやイタリアなどで政権を取った。今からみると彼らの荒唐無稽なスローガンが多くの大衆の支持を得たことは不思議にみえるが、当時としては必然性があった。