(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年11月24日付)

アメリカ国防総省でアシュトン・カーター米国防長官との対談に臨む、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(2016年6月16日撮影)。Photo by Ash Carter via flickr, under CC BY 2.0.

 サウジアラビアの首都リヤドの空港。到着便から降り立ち、ロビーを足早に通り抜けようとする旅行者たちに、アハメドさんは呼びかける。タクシー乗りませんか。セダンのタクシーありますよ――。

 30歳のアハメドさんは政府が費用を負担するプログラムで米国に留学した数十万人の1人で、機械工学の修士号を持っている。だが、何年も勉強してきたその方面の仕事はまだ見つかっておらず、現在はいわゆる白タクを、警察に見つかって罰金を取られるリスクを冒しながら空港から走らせるという不安定な暮らしをしている。

「景気は悪いですよ。仕事は一体どこにあるんですか」。アハメドさんはこう言う。「私の友人は皆、政府を呪ってますよ」

 アハメドさんの世代の苦労は、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子による改革に潜む危うさを浮き彫りにしている。ムハンマド副皇太子と言えばつい数カ月前、数世代にわたるサウジの長老支配と対照的な元気のある指導者だと歓迎されたその人だ。

 多大な権力を誇る副皇太子は、原油安を受けて政府が取り組んでいる経済多角化計画の先頭に立ってきた。またこの大胆な改革と併せ、隣国イエメンの内戦でイランの代理勢力を空爆してイランの影響力の拡大を阻止することにも、同じくらい強い決意を示していた。

 だが、31歳の若き副皇太子の指揮下で、この中東一の経済大国では、非石油セクターが30年ぶりの景気後退に陥る瀬戸際まで落ち込んでいる。政府が購入した物品やサービスの代金支払いを留保しているために、企業の景況感は悪化している。公務員の給与や手当の削減は、消費支出に打撃を及ぼしている。さらに、多額の資金を投じたイエメン内戦への介入は、人命を犠牲にしているうえに諸外国からの批判も招いている。

「蜜月は終わった」とあるファンドマネジャーは指摘する。「景気からイエメンの惨事に至るまで、政府にとって良いニュースは1つもない」