稲田防衛相、南スーダン派遣施設隊を視察

南スーダンの首都ジュバで、同国のデービッド・ヤウヤウ副国防相に迎えられる稲田朋美防衛相(右、2016年10月8日撮影)〔AFPBB News

 11月19日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に第11次隊として派遣される部隊の壮行行事が陸上自衛隊青森駐屯地で行われ、派遣隊員たちは翌日、青森空港から出発した。

 今次派遣隊員は、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」などの新任務を担う陸自第九師団を基幹とする約350人の隊員である。

 新聞によると、19日には衆院議員会館前に約3800人が集まり、「駆けつけ警護は絶対反対」などとシュプレヒコールを繰り返したという。

 また兵庫県では、34の市民団体が神戸市役所前で抗議集会を実施し、「駆けつけ警護は戦争行為」「自衛隊をPKOから今すぐ戻せ」などと書かれたプラカードを手にデモ行進をしたという。

 「自衛隊のPKO派遣反対」というならまだ分る。だが「駆けつけ警護は絶対反対」とシュプレヒコールを繰り返す人たちは、自衛隊PKO部隊の近くで活躍するNGOや邦人たちがもし暴漢に襲われそうになった場合でも、自衛隊は助けに行くべきではない、見て見ぬふりをしろと言うのだろうか。

駆けつけ警護に反対が47.4%

 「戦争反対!」のプラカードを手にデモ行進している人の映像を流しながら、「駆けつけ警護」のニュースを流すテレビ報道は明らかに国民を不安に陥れる印象操作だ。

 「駆けつけ警護」と「戦争」とは全く関係がない。にもかかわらず、あたかも自衛隊が海外の戦争に派遣されるかのように印象づける。「駆けつけ警護」を「戦争」と関連づけ、おどろおどろしさを印象づけようとするメディアの意図のようなものを感じたのは筆者だけだろうか。

 時事通信が10~13日に実施した世論調査では、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸自部隊に「駆けつけ警護」の任務を新たに付与することへ反対が47.4%に上ったという。

 この数字に筆者は大いなる違和感を感じた。だが、国会での議論や上記のようなメディアの報道ぶりを見ていると、さもありなんと思う。

 「駆けつけ警護は戦争行為」「駆けつけ警護は絶対反対」と叫ぶ活動家、そしてそれをメディアが映像で垂れ流す。リスクに特化した国会での稚拙な論戦にも責任があるが、何よりPKOの背景や過去の経緯を正しく伝えることなく、危機を煽り続けたメディアには大きな責任がある。

 「駆けつけ警護」とは、自衛隊が外国でPKO活動をしている場合に、自衛隊の近くで活動するNGOなどが暴徒などに襲撃されたときに、襲撃されたNGOなどの緊急の要請を受け、自衛隊が駆けつけてその保護にあたる行動である。(官邸ホームページより)

 国会での議論やメディアの報道ぶりを見ていると、派遣される部隊は、あたかも「駆けつけ警護」が主任務と誤解する国民がいても不思議ではない。あくまで主任務は南スーダンの国づくりを手伝う施設活動であり、活動期間中、場合によっては緊急的に「駆けつけ警護」を実施することもあり得るということだ。

 「駆けつけ警護」が主任務かのようなメディアの報道ぶりに部隊も戸惑っているようだ。青森で行われた壮行会で納冨中第9師団長が訓示であえて次のように述べざるを得なかったことからも分る。

 「新任務が付与されるが、派遣施設隊の主任務は南スーダンの国づくりのための施設活動であることには何ら変わりない」