People gather for the "Diner en Blanc" (Dinner in White) in Battery park New York on Septembre 15, 2016. (c)AFP/KENA BETANCUR

 私は公認会計士、心理カウンセラーとして経営コンサルティングを行っている。こういった肩書きで仕事をしていると様々な相談が寄せられる。

 そろそろ上場も見えてきた。会社の従業員は毎年倍増し、規模拡大中の会社の経営者。業界の人たちからは注目を集めるその経営者の方からこんな相談を受けた。

 「実は今すぐ会社を辞めたいんです。とはいえ自分が創った会社なんで辞めるわけにもいかず・・・」

 時代の流れもあって、展開しているサービスへの受注が殺到し、その仕事をこなせる人員が圧倒的に不足する状況に陥った。急遽、人員募集をかけ、次から次へと人を雇い、その仕事ができるようになるためにスキルを教え、どんどん現場へ送り込んだ。

◎本コラム筆者(藤田 耕司)の記事一覧はこちら

仕事が増え従業員も増えたものの・・・

 そうするうちに受注はさらに増え、ビジネスチャンスを逃してはならないと人員募集の枠を倍増させる。

 気がつけば数人だった会社は100人近くまで従業員が増えていった。仕事に必要なスキルを教えてきたので、みんな与えられた仕事はできる。現場に行って仕事をこなし、せっせと売上の獲得に貢献してくれる。

 しかし、それ以上でもそれ以下でもない。大半の人間が入社2、3年目の新人から構成される会社。現場を統率するだけの組織体制も仕組みもまだできていないため、現場の主導権は徐々に新人組によって握られ始める。

 そんな状況でも仕事は次々に舞い込んでくるため、さらに人員を募集し、現場の新人比率はさらに上がっていく。

 一見すると今をときめく急成長の会社のように見える。しかしその内情は、メンバーの統率はとれず、業務の質は下がり、一方でお客様は増えるため、質の低い業務をより多くのお客様に提供するという状況に陥っていた。

 こういった状況で社長の負うリスクと責任の大きさを考えると、ぞっとするものがある。そんなリスクと責任を負いながらも会社に行くと、社長といえども新人組からはよそ者扱いされる。

[今日のJBpressの最新記事(トップページ)へ]