(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年11月10日付)

トランプ氏、同性婚容認や無給奉仕を表明 政権を「怖がらないで」

米ニューヨークで演説するドナルド・トランプ氏(2016年11月9日撮影、資料写真)。(c)AFP/MANDEL NGAN 〔AFPBB News

 米国がブレグジット(英国のEU離脱)に匹敵することをやってのけた。唯一の違いは、これを「欧州のローカルな問題だ」と片付けられる国や地域が世界のどこにもないことだ。

 こうなった以上、自由市場を旨とするグローバリズム志向の世界は一歩下がって椅子に腰掛け、次にドミノが倒れるのはどこだろうかと考えるしかない。

 まず思い浮かぶのはフランスだ。来年の大統領選挙でマリーヌ・ルペンが勝利を収めるはずがないと断言できる人が、今この時点でいるだろうか。

 とはいえ、フランスであろうとどこであろうと、ドナルド・トランプ氏の信じられない勝利と同じレベルの波紋を呼ぶことはできないだろう。我々の目の前で展開されていることが、数十年間にわたって西側世界を形作ってきた経済秩序に対する反乱であることは、もう疑う余地がない。

 米国の有権者の不満の種は米国固有のもの――例えばオバマケア(米国の国民皆保険制度)のコストなど――だったのかもしれない。だが、その底流にある物語とアプローチは、ブレグジットや、西側で見られる他のポピュリスト(大衆迎合主義)運動の多くと同じだ。

 トランプ氏の勝利は、英国のEU離脱を決めた国民投票と比べても計り知れないほど大きい。ブレグジット支持者のうち最も攻撃的だった人々は今でも、エスタブリッシュメント(既得権益層)が裏切るのではないかと固唾をのんで見守っているが、トランプ氏とその仲間たちはエスタブリッシュメントの牙城を強襲したのだ。

 ブレグジットの国民投票を間近で見た者にとって、これはあまりにもお馴染みの光景である。その核心にあるのは、国がほぼ真っ二つに割れ、相手方がなぜそんな投票行動に出たのか双方が理解に苦しんでいる状況だ。

 米国を支配するエリートたちに、そして共和党のエスタブリッシュメントにとってさえ不愉快だったトランプ氏の特徴は、変化を決意した社会の一部の人々にとって、ほぼ最大のセールスポイントになった。この男に国民が一票を投じるはずがないと頭のいい人々が騒げば騒ぐほど、トランプ氏の演説に耳を傾ける人々は、この男こそ自分たちが待ち望んでいた人物だという確信を深めていった。