(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年11月2日付)

暴言癖がエスカレート=トランプ氏、捨て身?-米大統領選

米ペンシルベニア州ニュータウンで行われた選挙集会で、演説する米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏(2016年10月21日撮影、資料写真)。(c)AFP/DOMINICK REUTER〔AFPBB News

 2006年にセルゲイ・ミリアン氏が「在米ロシア米国商工会議所」(RACC)のトップに任命されたとき、幼い頃に旧ソビエト連邦から移住してきたこの人物はロシアのソフトパワーを新たな方法で提示する典型的な体現者となった。

 ミリアン氏は、ロシア国営メディアから米国の専門家として何度となく取材を受け、米国のテレビに登場してロシアへの制裁に反対した。ニューヨークの高級住宅ブローカーと一緒に街をぶらつき、「ミリオンダラー・リスティング」という不動産ブローカーのリアリティー番組にまで登場した。おかげで、ある新聞からは「モスコミュール*1」というあだ名を付けられた。

 2014年にはドナルド・トランプ氏、そしてマイアミの不動産開発業者リレイテッド・グループのオーナーで大富豪のホルヘ・ペレス氏との3人で、競馬場にて一緒に撮った写真をフェイスブックで公開、その様子はすっかり「友だち」だった。

 そして今年、36歳のミリアン氏は、トランプ氏が大統領になれば米ロ関係は改善するだろうと語り始めた。

 聞けば、同氏は不動産ブローカーとしてトランプ氏の会社と一緒に仕事をしたことがあり、関係を維持してきたのだという。「とても前向きで親しみやすい人だ。保証する」。ミリアン氏はロシアの国営通信社RIAノーボスチにそう語った。

 以前であれば、こうした活動は特に害のないものに見えたかもしれない。だが、ロシアが米民主党全国委員会(DNC)のメールサーバーに侵入し米国の選挙プロセスへの干渉を試みたと米国当局が非難している時期だけに、ミリアン氏の活動――そしてトランプ氏とのつながり――に調査が及びつつある。

 民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン氏は、トランプ氏に親ロシア派のアドバイザーがいることや、トランプ氏自身も親プーチン路線を取っていることを指摘し、同氏をクレムリンの操り人形だと呼んでいる。

 トランプ氏は、ロシアとのつながりをひけらかさないようにしている。だが、ミリアン氏はロシア政府とトランプ氏の間を取り持つことのできる多くの仲介役の1人なのではないかという問題については疑問が山積している。

*1=カクテルの名称。「モスクワのラバ」の意