福島原発事故から5年、太平洋の放射線レベルは基準値に 研究

太平洋上から眺めた東京電力福島第1原子力発電所(2016年2月22日撮影、資料写真)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News

 東京電力が廃炉問題をめぐって揺れている。これまで総額2兆円程度とされていた廃炉費用が大幅に膨れあがる公算が高まってきたのがその理由である。廃炉費用をすべて東電が負担するということになると、同社の財務体質は急激に悪化する可能性が高い。

 今のところ政府は東電が経営努力で負担するという姿勢を崩していないが、福島第1原発以外の廃炉費用については、費用の一部を利用者に転嫁する方針がすでに提示されている。福島第1原発の廃炉費用についても、最終的に利用者負担となる可能性について指摘する報道も出ている。東電の現在の財務状況と廃炉費用について整理してみた。

廃炉費用の総額は4兆円?

 東京電力は、福島第1原発の廃炉や賠償に伴う費用として年間約4000億円程度を支出している。内訳は、廃炉費用が800億円、賠償費用が1200億円、除染などその他費用が2000億円となっている。

 福島第1原発の廃炉には30~40年の期間が必要とされているが、仮に年間800億円の廃炉費用が継続した場合、総額では2兆4000億円から3兆円2000億円の費用がかかる計算になる。

 東電と政府は現在、廃炉費用として総額2兆円程度、被災者への賠償と除染に総額9兆円程度の支出を見込んでいる。現状の支出規模が維持され、廃炉作業や除染作業が30年で済めば想定範囲に近い水準で一連の処理を実現できる。だがこの見通しは、ほぼ実現が不可能となりつつある。

 経済産業省は10月25日、「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」の会合において、福島第1原発の廃炉費用が大幅に増加するとの試算を提示した。それによると、現在、年間800億円程度となっている廃炉費用は、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが本格化することなどから、今後、年間で数千億円程度に膨れあがる可能性があるという。