(英エコノミスト誌 2016年10月29日号)

G20、「習近平劇場」に=指導力を内外に誇示-中国

中国・杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議の開幕式でスピーチする中国の習近平国家主席(2016年9月4日撮影)。(c)AFP/Mark Schiefelbein〔AFPBB News

歴史学の世界で戦いが激化している。

 中国共産党は、自らの権力掌握を脅かすものを、ほとんど理解不能な言葉で表現するのが好きだ。過去30年間、共産党は「ブルジョア自由化」の脅威と格闘してきた(多くの人は「プロレタリアート自由化」なら受け入れるのだろうかと首をかしげた)。また「和平演変(平和的転覆)」のたくらみとも戦ってきた(「改革開放」とは違い、こちらはどういうわけか非常に危険らしい)。

 そして今、習近平国家主席は「歴史虚無主義」との戦いに臨んでいる。神秘的な響きがあるが、主席にとっては深刻な脅威だ。

 ある国営通信社が先日警告したように、中国ではこの虚無主義が「底流で渦を巻いている」。踏みつぶしておかなければソビエト連邦のような崩壊に至りかねない、と政府の高官たちは話している。

 10月末、共産党が350人ほどの最高幹部を集めて開催する秘密の会議(この会議は秋に行われるのが通例)の数日前に、党のウェブサイトは、習近平氏が虚無主義の問題について語ったことの概要を公表した(これには「習主席:歴史に虚無などあり得ない」という興味深いタイトルが付いていた)。

 党の見解を代弁する新聞の代表格である「人民日報」も、この会議が始まるに当たり、ソ連共産党の崩壊など数々の歴史の教訓に言及した論説記事を掲載した。

 中国共産党が使う言葉(パーティー・スピーク)において、歴史虚無主義は、中国が社会主義に向かう必然的な流れを否定することを意味する(中国は現在、社会主義の初級段階にしか到達していないと見なされている)。

 1989年に天安門広場での抗議行動を鎮圧した後に、党幹部の間で流行した言葉だ。当時、党の中央総書記だった江沢民氏は、歴史虚無主義を、党を「著しく蝕んだ」思想的悪習の1つに挙げた。さらなる悪習としては、自由や民主主義の希求が含まれていた。

 習近平氏は歴史虚無主義について江沢民氏の表現をよみがえらせることで、歴史の語られ方を厳しく管理しなければ共産党の体制を脅かす危険に再び直面しかねない、と警鐘を鳴らしている。