(英エコノミスト誌 2016年10月22日号)

米電気自動車のテスラ、家庭用蓄電池を発表 「エネルギー・インフラ変革」目指す

米カリフォルニア州ホーソンで、家庭用蓄電池「テスラ・パワーウオール」を発表する電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(2015年4月30日撮影)。(c)AFP/David McNew〔AFPBB News

シリコンバレーきっての著名起業家、イーロン・マスク氏の財務運営は、同氏肝いりの宇宙ロケットと同じくらい驚異的、革新的にして、「可燃性」が高い。

 ハイテク業界の大物のほとんどがそうであるように、イーロン・マスク氏も財務というものを見下している。

 カリフォルニアのビジョナリーたちはもっぱら自動運転や宇宙旅行に目を向けており、転換社債やリース会計はウォール街の領分だということだ。だが、当人は認めたがらないかもしれないが、マスク氏は米国一有名な企業家であると同時に、米国一豪胆な資本家にもなった。

 同氏は巨額の赤字を出しながらも、わずか10年で440億ドルもの時価総額を誇る帝国を作り上げた(チャート参照)。「マスク株式会社」は、実験的な手法での資金調達、複雑に入り込んだ資本構造、恐ろしいほど思い切った行動などにより、不可能だと思われていたことの境界線を押し広げてみせたのだ。

 現在、マスク氏の事業はここ10年間と同様に、ある難題に直面している。市場での評価(バリュエーション)を向こう18カ月間維持しながら、新しい資金調達手段と新製品を向こう数週間のうちに発表すると人々に信じてもらうという難題だ。

 同氏は市場の予想を裏切る成果をたびたび上げてきた。だが株主や債権者、取引相手の資金・数百億ドルがリスクにさらされるようになった今、利害が大きくなった。

 電気自動車メーカーのテスラは生産台数を飛躍的に増やす必要がある。そのうえ、従来型の自動車メーカーが設計した新型電気自動車の脅威にも対応しなければならない。また、マスク氏はこのテスラと、住宅用太陽光パネルの取り付け工事を請け負うソーラーシティの2社を統合したいと考えているが、両社とも利益が出ていない。現金は消えていく一方だ。

 マスク氏はすでに米国のビジネス史に名を残す存在になっているが、後世の人々を鼓舞するお手本としてなのか、あるいは注意を喚起する悪い見本としてなのかは、程なく明らかになるだろう。