President Michel Temer waves as he takes office before the plenary of the Brazilian Senate in Brasilia, on August 31, 2016. (c)AFP/ANDRESSA ANHOLETE

 私は公認会計士、心理カウンセラーとして数字と心理の両面から経営コンサルティングを行っている。その中でも部下との関係に関するご相談は多い。このご相談について考えるうえでは、まず部下が上司にどのようなことを求めているかを知る必要がある。

 私は主催するセミナーや企業研修で「上司からしてもらったことで嬉しかったことは?」というテーマでディスカッションをしてもらい、そこで出た意見について発表していただくことがある。

 その意見の中で最も多いのが、「上司が自分の気持ちを理解してくれたこと」である。

 目標は達成できなかったものの、その過程において精一杯がんばったことを認めてくれた。自分の仕事の大変さを理解してくれたうえで、叱ってくれた。落ち込んでいる時に、飲みに誘ってくれ、居酒屋で親身になって話を聞いてくれた。

上司の目線から部下の目線へ

 そういった、上司が自分の気持ちを理解してくれたエピソードをこれまでたくさん聞いてきた。これまで聞いてきた中で思わず涙ぐんでしまったエピソードは1つや2つではない。

 そんななかでつくづく思うのは、「部下は上司に自分の気持ちを分かってほしいと願っている」ということである。それは子供が親に求めるものと近いものを感じる。

 ただ、上司は上司からの目線で部下とコミュニケーションをとりがちである。

 「そんなの出来て当たり前」「そのくらい大したことないだろ」「はいはい、分かった分かった」といったように、部下の気持ちにわざわざ共感するまでもないという態度で部下の話を聞いているケースは少なくない。

 部下と同じ目線に立って、部下の気持ちに共感しようという意識を持っている上司は果たしてどれだけいるだろうか。

 そういったコミュニケーションがとれない理由についても、セミナーや講演でディスカッションの際の意見を聞く。そのほとんどは、「面倒くさい」「そこまでかまっている時間がない」といった理由である。

 また、相手が部下であれ誰であれ、相手と同じ目線に立って相手の気持ちに共感しようという意識を持ってコミュニケーションをすることがあまりないといった意見もある。