グレッチェン・パーラトのライブの様子。「Gretchen Parlato - Live in NYC: BUTTERFLY」(YouTube)より

 本コラムでも何回か、洋楽、邦楽問わず「いま一番面白くてエキサイティングなジャンルはジャズ!」ということを書いてきました。

 なぜいまジャズが面白いかというと、ここ数年の流れとして、ヒップホップなどエレクトロニックなダンスミュージックや、さまざまなロック、ソウル/R&Bを聴いて育ってきた世代のミュージシャンたちが、それらの影響をジャズのフォーマットに自然な形で反映させたり溶け込ませることで、既存のジャズとは違った新たなスタイルのジャズをクリエイトしていることが挙げられます。

 特にリズムアプローチの点で、生演奏ではなく機械への打ち込みで進化してきたダンスミュージックのパターンに影響を受けて、その複雑なリズムパターンを高いテクニックによる生演奏で再構築/再解釈するといったことが特長の1つと言えるでしょう。

 また、「ジャズ+○○」といったように既存のジャズに他のジャンルの要素をミックスさせる手法はこれまでのジャズの歴史でも見られましたが、現在進行形の新世代によるジャズは無理矢理例えてみると、「○○+○○+○○+ジャズ+○○÷○○+ジャズ+○○」といった感じでしょうか。ジャンルを越境したというか、ジャンル分けが不可能になってきたというか、ジャズというジャンルを拡大させて再定義しているという感じで、だからこそスリリングでフレッシュでエキサイティングな作品が続々と生み出されてきているように思います。

本コラムは音楽レビューサイト「Mikiki」とのコラボレーション記事です

 今回はそんな活況を呈する新世代ジャズシーンの中から、海外の女性ジャズボーカリストを3人ピックアップしてご紹介したいと思います。

 この3人に共通しているのは、「ジャズスタンダードをジャズマナーで上手く歌う」といったステレオタイプなジャズボーカリストのイメージを超えた存在というか、ボーカリストであり楽器のプレイヤーであり、ソングライター(作詞/作曲家)でもあり、プロデューサー、アレンジャーでもあるといった、トータルで音楽を創造する才能をもった「音楽家」であるということです。