食事のメニュー、本当に自分で選んでいますか?

「食の環境」は「食」をどう変えるか(前篇)

2016.10.21(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
あまたある食。私たちは日々どうやって食の意思決定をしているのだろうか。

 何かの目的をかなえるため、選択肢から最適なものを選ぶことを「意思決定」という。意思決定というとビジネス上の物事を想像してしまうが、実は「食」でも意思決定は密接不可分だ。自分の食の要求を満たすため、複数の店から食べる店を選び、複数のメニューから食べるものを選ぶのだから。

 では、人は日々どのように食の意思決定をしているのだろう。言い換えれば、何が、あなたに「その食事」を選ばせているのだろうか。

「その場で『おいしそう』とピンときたものを食べるだけじゃないの」「そんなの気分次第だよ」と考える人も多いかもしれない。だが、それだけだろうか。

 世の中は「つい食べてしまう」行為にあふれている。また、テレビやスマホに意識を取られながらの「ながら食べ」や「だらだら食べ」も多い。そう考えると、自分の意志とは異なる要因が「食べ方」を決めている部分も多いのではないだろうか。もし、そうだとすれば、そのことを認識すること自体が「食べる」という行為の質をより高めることにつながらないだろうか。

 そのようなことを考えつつ、今回は「食の意思決定」をテーマに、研究者に話を聞くことにした。日本大学危機管理学部准教授の木村敦氏は「食の社会心理学」を研究分野の1つとしている。食の意思決定において、風味や空腹といった感覚的要因だけでなく、食の環境という外的要因がどう影響しているのかを研究している。

 前篇では、私たちの「食べ方」を決める要因にはどのようなものがあるのか話を聞くことにする。後篇では、木村氏自身のこれまでの「食の意思決定」に関わる研究成果について紹介してもらうことにしたい。

食べ飲みに関する意思決定は「1日に227回」

――私たちの日々の「食の意思決定」には、どのような要因があるのでしょうか。どのように、私たちは「これを食べるとしよう」と評価しているのでしょうか。

木村敦氏(以下、敬称略) まず、「風味がよい」「見た目がきれい」「食感がよい」「温かい・冷たい」あるいは「お腹が空いている」といった感覚的要因があります。しかし、それだけでなく、食事の提供方法などのさまざまな“外的要因”も、食味の評価や食品全体の評価に影響することが分かっています。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

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