(英エコノミスト誌 2016年10月15日号)

英ポンド、原因不明の急落 金融市場に衝撃

ロンドンの英イングランド銀行前で掲げられたポンド紙幣(資料写真、2009年3月5日撮影)。(c)AFP/CARL DE SOUZA 〔AFPBB News

ポンド安は「ハードブレグジット」の痛みがどれほど大きくなるかを暗示している。

 英ポンドがナイジェリア・ナイラ、アゼルバイジャン・マナト、マラウィ・クワチャといった通貨と比較されることはめったにない。だが、ブルームバーグがまとめた対米ドルレートの年初来変化率のランキングによれば、英ポンドは154通貨の中で最も低いグループに属している。

 ブレグジット(欧州連合=EU=からの離脱)を決めた国民投票以降、英ポンドの実効レート*1は15%下落しており、2008~09年の世界金融危機時に記録したレベルにまで落ち込んでいる。

 この急落の原因は、テリーザ・メイ首相の率いる英政府が「ハードブレグジット」、すなわちEUの関税同盟からも単一市場からも離脱する方に向かっていると認識されていることにある。

 また、外国人労働者や外国資本の取り締まりを求める声が上がっており、英国が外国人嫌いで介入主義の、何が起こるか予測できない場所に変わってしまうとの不安感もポンド安に拍車をかけている。単一市場のメンバーで政治環境も安定しているために外国から多額の投資を招き入れることに慣れているこの国にとって、これは大きな変化だ。

 英国の経常収支の赤字(外国からいくら借りているかを示す目安)が国内総生産(GDP)の6%相当額にのぼっていることから、これは危険な変化でもある。確かに、英国は国際収支危機に向かっているわけではない。英国の借金は自国通貨建てであり、ポンドが安くなっても元利返済のコストがそれにつれて膨れあがるわけではない。

 また、英国への資本の純流入は、預金や短期借り入れではなく外国直接投資(FDI)の形を取ることが多く、預金のように一夜で逃げてしまうことがない。だが、ひとたび信頼を失ってしまうと、立ち直るのは難しいかもしれない。外国からの投資が干上がり、ポンドが弱いまま推移すれば、英国人は永遠に今より貧しくなるだろう。

*1=主要通貨に対する値動きをその発行国との貿易量で加重平均して算出する為替レート