(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年10月11日付)

クリントン氏支持、さらに拡大 わいせつ発言のトランプ氏に11P差

米ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で、第2回大統領選討論会に臨むヒラリー・クリントン氏(左)とドナルド・トランプ氏(2016年10月9日撮影)。(c)AFP/Paul J. Richards 〔AFPBB News

 期待値のバロメーターでは、共和党の大統領指名候補、ドナルド・トランプ氏が2回目のテレビ討論に「勝った」。同氏は自滅すると見られていたが、しなかった。恥ずかしそうなそぶりを見せる代わりに――討論会の前の48時間に暴露されたことを考えれば、大半の人間なら決まりが悪かったろう――、自分のモットーを貫いた。「絶対に説明するな。絶対に謝るな」がそれだ。トランプ氏はこのモットーにしがみつき、討論を前人未踏のどぶへ投げ込んだ。

 最も甚だしい例を挙げると、トランプ氏は、自分が大統領だったら、ヒラリー・クリントン氏は刑務所にいるだろう、クリントン家の犯罪容疑を捜査する特別検察を設置すると述べ、クリントン氏が夫による女性の性的虐待を可能にしたと言い放った。ポーラ・ジョーンズさんをはじめ、被害に遭った女性4人が会場内に座っていた。

 どんな歴史的基準に照らしても、自分が選出されたら対抗馬を投獄すると脅すことは、大統領指名候補の終わりを告げたはずだ。「彼女は心に憎しみを抱いている」と言うことも、多分にそうだったろう。ところが、2016年の米国の歪んだ流れにおいては、それがトランプ氏のカムバックの役割を果たした。

 こうしたやり取りを近代史で判断することは無意味だ。「トランプvsクリントン」の争いでは、米国の大統領制民主主義は19世紀に最後に見られたような侮辱のバザーと化した。激しく二極化した有権者を受け継いだ揚げ句、その亀裂は深まる一方だった。今年の堕落した基準と照らしても、ハードルはすでに下がっている。トランプ氏の脅しは言語道断で、最低記録をさらに更新した。

 だが、トランプ氏は事前に、ビル・クリントン元大統領の性的な過去を持ち出し、かつて元大統領の犠牲になった人たちを招待すると明言していたことから、それが世間にショックを与えることはなかった。