(英エコノミスト誌 2016年10月9日号)

日米韓、核・ミサイル厳戒=北朝鮮の党創建記念日

北朝鮮・平壌の天然水工場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)配信(撮影日不明、資料写真、2016年9月30日配信)。(c)AFP/KCNA VIA KNS 〔AFPBB News

北朝鮮の核の脅威が急激に増大しているが、答えは先制攻撃ではない。

 ジェームズ・ボンドの映画に出てくるような昔ながらの分かりやすい悪者が世界には少なくなった。だが、少なくとも金正恩(キム・ジョンウン)がいる。

 北朝鮮が今年8月に潜水艦から弾道ミサイルを打ち上げたとき、たばこを片時も手放せない正恩氏が側近の将軍たちとともに快哉を叫んだ様子や、先月、同国史上最大の規模を誇る5回目の核実験を行ったときに、民族衣装に身を包んだ女性アナウンサーが実験の成功を伝えながら歓喜の涙を流した姿を見るといい。

 一口に道徳と言っても灰色の濃淡が何通りもある世界にあって、国家という仮面をかぶった強制労働収容所を運営する正恩氏の核武装の野望は、はっきりと黒と白で描かれている。

 米国の多くの政策立案者にとって、あの潜水艦弾道ミサイル発射と核実験は転換点になった。これまで北朝鮮のミサイルは韓国と日本を脅かすだけだった。だが、核とミサイルの開発があのようなハイペースで、そしてあれほどの決意とともに進められた結果、今やとうとう米国自体をも脅かし始めている。ロサンゼルスが核攻撃を受ける可能性について考えなければならない時期が来たのだ。

 米ワシントンに本部を置くシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアンドリュー・シアラー氏は、今年の夏の実験は米国にとって「ゲームチェンジャー」になり得る局面を示したと述べている。北朝鮮は今、米国の次期大統領に託される課題リストの中で最上位に向かって急上昇している。問題は、北朝鮮の核開発プログラムの封じ込めにずっと手こずってきた米国に、取るべき策が残っているか否かだ。

 この夏の実験は、少なくとも1つの有用な目的の達成に役立った。国交正常化への序曲として北朝鮮に核開発プログラムを放棄するよう交渉し、説得できるかもしれないという歴代の米国指導者層の勘違いを完全に葬り去る、という目的だ。

 今では機能を停止した、米国、中国、日本、ロシア、韓国、北朝鮮による「6カ国協議」は、北朝鮮を説得することは可能だという認識に基づいて行われていた。外交努力は間違いではない。交渉しない正当な理由がないのであれば、敵との交渉を希望し続けるべきだ。

 しかし、6カ国協議は常に北朝鮮を利する形で終わった。援助の増額、制裁の緩和、あるいは核開発の時間稼ぎなどがそれに当たる。北朝鮮が気づいていたように、ここが肝心な点だった。