だがその後、家族の現地調査で、スネドン氏は渓谷を渡り終えていたことが確認された。同時に、日本の拉致問題の「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)は、「当時、雲南省の同地域では北朝鮮工作員が脱北者などの拘束のために暗躍しており、米国人青年も拉致した」という情報を中国側から入手してスネドン氏の家族に伝えた。この情報により、スネドン氏は実は北朝鮮工作員に拉致され、北朝鮮に連行されたままになっている可能性が高いことが明らかとなった。

 また、元拉致問題担当大臣の古屋圭司衆議院議員は、米側上下両院に米国としての本格的な調査に向けた決議案の提出と採択を一貫して訴えてきた。

 古屋氏は、米国の政府や議会が疑惑解明に向けて動くことは、日本人拉致事件の解決にもつながるとして、ワシントンを頻繁に訪問し、米国議会上下両院の議員たちに直接働きかけてきた。古屋氏の働きかけは功を奏し、同決議案への米側賛同議員の数は増えていった。日本の議員の訴えで米国議会の決議案が前進したケースは珍しい。

 こうしたスネドン氏の家族の必死の調査と日本側からの強い要請で米国議会が動き、2016年2月、上下両院にスネドン氏の行方調査を米政府に求める決議案が提出された。

 決議案は、スネドン氏が北朝鮮に拉致されたらしい理由として以下の事柄を列挙した。

(1)同氏は渓谷を越えた地点の朝鮮料理店で目撃されており、「転落した」は根拠がない。
(2)当時、この地域は脱北者やその支援者の通り道とされ、北朝鮮工作員が活動し、拉致も行っていた。
(3)日本の民間組織から「米国人大学生が雲南省で北に拉致された」という情報があった。
(4)北で軍の要員に英語を教えてきた米国人チャールズ・ジェンキンス氏が前月に出国し、後任が必要だった、など。